12月5日、大阪にてコラボイベント「Osaka Innovation Hub × 新経済連盟 オープンセミナー Vol. 3」を開催しました

2016年12 月5日、新経済連盟が大阪イノベーションハブとコラボして開催するセミナーの第三弾 「OIH X 新経連オープンセミナー」を大阪・梅田にて開催しました。
   
新経済連盟幹事の秋好陽介氏(ランサーズ株式会社 代表取締役社長CEO)に講師をお務めいただいたこのセミナー、師走の月曜夜の開催にも関わらず、アントレプレナーやベンチャー企業経営者、事業会社の方、ベンチャー支援企業の方、そして教育機関や行政の方など多様な参加者にお集まりいただきました。
   
   


新経済連盟幹事 秋好陽介 様 (ランサーズ株式会社 代表取締役社長CEO)
   
   
以下、講演抄録となります。

   
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   
「夢物語」から「新しい市場」を創った起業家 -なぜ僕は走りつづけるのか-
   
世間では起業のポジティブ面が語られることが多いが、自分の体感では、起業は楽しいことが2%、辛いことが98%。これが自分にとっての「起業のリアル」。
   
大阪・高槻市で育ち、23歳で就職するまでずっと大阪。実は高校を卒業して2年ほどくすぶってフリーターをやっていた。成人式で中学時代の友人たちに再会し、改めて自分自身を眺めて「これじゃいかん」と。そこから一念発起して勉強して大学へ入った。大学では同級生はみな年下。負けたくない想いもあって、在学中にネットベンチャーを立ち上げ、大阪で学生をやりながら東京の大手の代理店やネット企業と仕事をし、かなりの報酬を得ていた。この挫折を乗り越えた経験から、頑張れば報われる、成功できるということを学んだ。  
   
インターネットのポテンシャルを実感したのもこの頃。東京の一流企業のクライアントと一度も会わずに、大阪から一歩も出ずに仕事ができていた。そういう働き方を可能としていたのがインターネット。その奥に広がる可能性とすばらしさに気づき、インターネットで世界は変わると確信した。これが今の自分の原点になっている。 
   
ニフティに就職して東京へ。そこで知った現実は、日本の商習慣においては、ニフティのような大企業は個人事業主に仕事を発注するのが困難なこと。しかし、自分は学生ベンチャーとしての実体験からも、優秀な個人は数多くいて、そういう人に発注したほうが大企業にとってもコスト・クオリティの両面でメリットが大きいことを知っていた。企業と個人をマッチングする仕組みがないなんてもったいない!ここから「ランサーズ」のアイデアが生まれた。人の真似をするのは絶対に嫌、という性格。類似のサービスが既にないか、ネット検索しまくった。調べど調べど出てこない。「宝の地図を見つけた!」という気持ちになり、見つけたものの責任としてやり遂げねば、とも思った。
   
ニフティを3年で退職し、2008年に起業した。最初は鎌倉市で弟と二人で起業。起業してから猛スピードでサービスを立ち上げ、2009年にリリースした直後はメディアの注目もそれなりに集めて数千人が登録してくれた。しかし、そこから2年間、サービスが全く盛り上がらなかった。月の売上げ10万円の日々が続き、運転資金も減り続け、その時期は本当に辛くて、「ブルーマンデー症候群」に完全に陥っていた。その時あきらめなかったのは、まず「テクノロジーによって働き方が変わる」という可能性を心の底から信じていたこと。説明できない自信が自分の中にあった。それから、「自分に申し訳ない」という気持ち。安定した大企業を辞めてリスクをとって起業した当時の「清い自分」と比べ、今の自分はダサい、と。そして、サービスユーザーである個人の「ランサー」さんたちが本気で仕事に向き合っている姿に触れたこと。 
   
どん底から這い上がれたのは、何かすばらしい戦略があってブレイクスルーが起きて・・・ということではない。目の前にいるランサーさんに対し、ただただ仕事をマッチングさせるための小さな改善を200~300回行っていくうちに、だんだん使ってもらえるようになった。すごく地味なことをひたすら積み重ねた。戦略で成長する会社も多いが、積み重ねによって拡大する会社もおうおうにしてある。自分はどちらかというと後者のタイプの経営者だ。
   
2年前に社員数が100名を超えた。そこから向き合う経営課題ががらっと変わった。それまではサービス・プロダクトに向き合っていればビジネスを成長させることができたが、100人規模の組織では否が応でも「人」と向き合わざるを得ない。このステージのベンチャーでよく起こるのは、頑張って採用しても同じ数だけ辞めていく現象。「100人の壁」を乗り越えるために取り組んだのは、まず、経営幹部に会社のミッション・ビジョンを自分の言葉で語れる人材をコア人材として入れたこと。そして、全社員でランサーズの行動指針となる「Lancers Way」を作って目線あわせをしたこと。さらに、さまざまな社内行事を行って、コミュニケーションの更なる活性化の仕組みを作ったこと。そうして、自分の声が社員一人ひとりにまで届くような努力を続けている。
   
状況が刻一刻と変わるベンチャーでは、メンバー全員がそれぞれ自分の頭で考えられねばならない。それには各メンバーが「自分の言葉でビジョンを語れるか」が鍵になる。自分の下にイエスマンが100人いたら1個の脳みそになってしまうが、ビジョンを共有する仲間が100人いたら100個の脳みそで戦える。そういう組織は本当に強いと思う。
   
今心がけているのは、会社としての思い出づくり。誰とこの瞬間を分かち合って今があるのかを歴史に刻むこと、あの時ああいうことあったよねと仲間と話せることは組織としてとても大切。起業した当時は全く気づいていなかったが、仲間がいて、ユーザーがいて、一緒に思い出を作っていく・・・そういったことが「起業」の中の重要な要素と今は思っている。 
   
ビジネスでこれからやりたいことは大きく2つ。まず、フィリピンの拠点を手始めに「働く」をグローバルに広げていくこと。それから、インターネットを使わない仕事、つまり「リアルな領域」における「働く」をテクノロジーで変えること。クラウドソーシング事業もこのまま拡大しつつ、グローバル、リアルな領域、正社員領域含め、全ての「働く」を変えていく。そして、2020年までに、ランサーズを通して1千万の人々が働いているという状態を目指す。海外旅行が好きなのだが、旅先の外国のバーで隣り合った人との雑談で、「仕事なにやってるの?」と聞いて、相手から「ランサーズっていうのがあってね、ランサーズで働いてる。」と返ってきたら最高。こんな経験をするためにやっているといっても過言ではない。今の自分の「ワクワク」の源泉はそれ。 
   
大阪出身者として、関西の起業環境が盛り上がるよう心から望んでいる。日本の課題解決には、東京だけの課題解決ではダメ。東京に加えて、さまざまな地域の課題解決があって、日本の課題が解決されると思っている。その「地域」の中で、主要都市が集まり、最もポテンシャルが高いのが関西。「本気で関西を変えたいんだ!」という誰かが現れて、その人が周囲を巻き込んでいって、関西の起業文化・ネットワークを広げていく、、、そんな「最初の火種」が早く生まれてほしい。そうしたら、自分も応援するし、新経済連盟ももちろん応援する。そして、そういう人が今日のこの場から生まれたら、とても嬉しい。
   
 
   
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
   
秋好氏が熱く語る「起業のリアル」に、オーディエンスはぐいぐい引きこまれ、Q&Aではフロアから活発に質問が飛ぶ、一体感のあるセミナーになりました。セミナー後に行われた交流会でも、「共感した」、「勇気づけられた」、「日本の未来に希望が持てた」という声が多く聞かれ、最後まで参加者同士のにぎやかな交流が続きました。
   
グランフロント大阪7Fを拠点とする「大阪イノベーションハブ」は、2013年に大阪市により開設された「大阪から世界へ」をテーマに起業家や技術者が集まるビジネス創出支援拠点です。
   
新経済連盟は、近畿・関西圏での活動の一環として本コラボイベントを今後も継続的に開催していく予定です。 
最後に、大阪市・大阪イノベーションハブの皆さま、ご参加くださった皆さま、そして講師をお務めくださった秋好幹事に心からお礼申し上げます。
   
   
   

提言・ニュース