岸田政権の新方針『新しい資本主義の実現』に関する新経済連盟の基本的な考え方について

2021年10月6日
一般社団法人 新経済連盟
代表理事 三木谷 浩史

 

一般社団法人 新経済連盟(所在地:東京都港区、代表理事:三木谷浩史、以下「新経連」)は、岸田政権の新方針である『新しい資本主義の実現』に関する基本的な考え方について、経済団体として以下の通り明示する。経済界として日本経済再生のためにできることは積極的に対応していく所存である。
なお、当連盟は、「新政権が今後実施すべき日本再生に向けた方策に関する基本的考え方」をすでに9月28日に示しているのでそちらも参照してもらいたい。

  1. 日本経済の現状を踏まえた基本的な方向性
    (1)直近30年にわたって、国民所得や賃金水準は先進国の中で長期低落傾向になっており、購買力平価ベースでも最近韓国に追い抜かれたばかりである。
    (2)このように極めて厳しい経済状況を振り返ると、政権が示した最終目標である『国民の生活を守り、国民の所得を増やす』ということを真に達成するためにどうすべきかを我々も検討していきたい。我々としては、労働分配率の事実上強制的な変更などを講ずるべきではないと考える。むしろ、民間のイノベーションを引き出しそれへの投資を促すことで付加価値や生産性向上を図ることこそが、日本経済の構造自体を変革するものとして根本的かつ持続的な治療となる。つまり、まずは成長が最優先である。

  2. 今回示された政府方針に関する重大な懸念事項
    (1)上記1.の考え方が必ずしも明らかでなく、肝心の所得を増やすということ自体への道筋やそれを達成するための具体的打ち手をより明確にする必要がある。
    (2)リスクマネーの供給を大きく阻害し課税計算対象である株価等にも大きな影響を及ぼす金融所得課税の強化は、明確に反対である。むしろ、個人や法人の活動を活性化し元気づけるためには、個人所得税の最高税率の引き下げ、相続税の引き下げ、法人税の引き下げが必要である。また、企業家による社会貢献活動や投資を促すフィランソロピーエコシステム(※1)を作ることも重要である
    ※1 2017年4月公表 ベンチャー・フィランソロピーと社会的インパクト投資の促進に向けた政策提言

  3. 成長戦略として進めるべき施策
    規制改革や税制改革等をさらに徹底させることが、所得を増やすための根本的な処方箋である。具体策は、本年9月に公表した当連盟の提言(※2、※3)を参照。
    ※2 2021年9月28日公表 新政権が今後実施すべき日本再生に向けた方策に関する基本的考え方
    ※3 2021年9月29日公表 デジタル庁「デジタル社会構想会議」にて「Innovate Japan by Digital」について説明

    デジタル経済下にあって日本発の産業が生まれるイノベーション環境を作り上げていくことが必要。そのため、産業政策・競争政策・経済安全保障にわたる具体的打ち手をまとめた提言を近日中に発出予定。当該内容の実施を強く期待する。

    ・その他、自民党の『新たな資本主義を創る議員連盟』の設立趣意書等でも関連記述がある以下の点は、我々の各種提言でも具体策をすでに言及しているので当該施策を実現するべきである。
    【例】
     OS、アプリ問題を起点とした産業構造転換に合わせた適切な競争政策の実現
     教育投資、企業内での人的投資の促進(税制改革)
      

 

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