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1月11日、会員セミナー「自治体のICT導入と教育現場での活用」を行いました。

2018年1月11日、会員セミナー「自治体のICT導入と教育現場での活用」を行いました。
新経済連盟「教育改革PT」では、教育へのICT導入・EdTechの推進について今後積極的に発信をしていく予定ですが、その準備段階として「教育の未来とICTの役割~先進事例から見る現状と課題~」と題した数回の勉強会を開催することになり、今回はその第一回目となります。
今回は講師として、元総務大臣補佐官の太田直樹様をお招きし、自治体におけるICT導入の現状とその教育現場での活用に関する課題・展望について、自らのご経験に基づいてお話しいただきました。太田様は、民間企業でテクノロジー領域を中心としたコンサルティング業務に長年携わっており、その経験を活かしてICT X 地方創生の政策立案をされていました。
  
講師:太田直樹様(元総務大臣補佐官)
  
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講演概要
  
【島根県海士町島前高校での事例紹介】
島前高校の生徒数は平成15年時点で約145名でしたが、少子化・島外流出等によって、平成20年には約90名に減少し、廃校寸前の状態でした。そこで、「島留学」・「公立塾」・「寮」の3つの戦略を立て、学校の魅力化に取り組みました。同時にICTの活用にも力を入れて取り組み、現在では、見事に復活を遂げ、教育改革の先進事例として注目を集めています。
教育環境が整っておらず島外に出ていってしまうという問題がありましたが、ICTを活用することで、島外の学校の生徒との協働授業などに参加することができるようになり、外部とつながることによって状況は改善できることを示しました。「遠隔で学習をすることにより、価値観の違う生徒同士で交流ができる」というメリットもあります。公立塾には島前高校の約80%の生徒が通っています。そこでは、単に勉強を教えるだけではなく、「夢ゼミ」という取り組みも行っています。生徒が一人ひとり、将来の夢や興味があることを発表して、それについてグループでディスカッションしたり、フィールドワークをする取り組みです。「島留学制度」で県外からきた生徒たちが寮を利用しています。
  
【教育現場で新しい取り組みを行うために必要なこと】
魅力化導入校は、島根県で40校中10校、全国では北海道から沖縄まで約20校です。しかし、このような新しい試みは、「信用できない」といった漠然とした不安や、「多数が利用できない」といった物理的制約等、多くの問題があります。海士町のような地方では、「子どもたちが高校段階で島外に出て行くのを食い止めたい、島全体の活性化にもつなげたい」という思いがありますし、また長すぎる教員の労働時間は全国どこでも大きな課題になっています。教育現場をとりまくこのような多くの課題を解決するためにも、ICTの活用を怖がらず、必要性を認めていくことが大切です。
  
【既存の取り組みから惹きつける】
例えば、学校側は発達障害者の子供には、個別学習指導計画を作らなければなりませんが、現状は作られていません。発達障害の子供向けの塾を経営している民間企業とICTを活用した連携を行い、指導計画書の作成を委託できれば、教員の業務負担軽減につながります。さらにクラウドサービスによって、家でも教育状況を確認することができれば、格段に良い教育を受けることができます。こういった事例から、ICTを教育現場で活用することにいかにメリットがあるか訴えていくことが必要です。
  
【社会システムの移行と教育】
一般的に、社会システムが古いものから新しいものに移行する際は、全てがガラリと変わる訳ではなく、必ず互いが重なる時期が出てきます。完全に新しいシステムに移行するにはいくつか壁があり、教育の場合、既存の教育を受けた人に、島前高校のような新しい学習の在り方をいかに理解してもらうかが鍵となります。一つの案として、教育のみを対象にするのではなく、「ウェルビーイング(肉体的・精神的・社会的に良い状態)」を指標とした子供へのアプローチ等、多角的な施策を視野に入れることが考えられます。
   
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学校を魅力化していくことが、教育現場の生産性、効率性の向上につながったという島前高校を例に、多くの教育現場で今一度、あるべき姿を検討する必要があると考えさせられました。講師をお務めいただいた太田様、ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。

以上