電気通信事業法の改正の方向性に対する懸念について

一般社団法人 新経済連盟(所在地:東京都港区、代表理事:三木谷浩史)は、2021年12月17日、総務省において検討が進められている電気通信事業法の改正の方向性に対し、経済団体として下記のとおり懸念を表明する。

  1. 総務省における議論の状況
    総務省に設置された「電気通信事業ガバナンス検討会※1」及び「プラットフォームサービスに関する研究会※2」において、現在、通信の利用者情報に関する規制強化について検討が行われている。

    ※1 電気通信事業ガバナンス検討会
    ※2 プラットフォームサービスに関する研究会

  2. 総務省が示す方向性への重大な懸念
    これらの場において総務省が示している、特に電気通信事業法の改正の方向性には次のような懸念があり、デジタルビジネスのみならず日本社会のデジタル化全体にとって深刻な負担や阻害要因となるおそれが高い。
    ① 総務省が、ネット利用企業/デジタルサービスを広範に網にかけた規制強化を行おうとしていること
    ② 電気通信事業法が「情報取扱いの一般法」となり、二重規制や過剰規制をもたらすこと
    ③ 国際的に極めて異常なガラパゴス規制が、日本のデジタル化に悪影響を及ぼすこと

    また、半年間の非公開の会合で行われた拙速な議論に基づきこのような重大な改正を行おうとしていること自体にも大きな瑕疵があると言える。

    資料PDFはこちら

  3. 公正かつ精緻な議論の必要性
    政府は我が国が目指すべき未来社会の姿として「Society 5.0※3」を提唱しているが、これにより実現する社会については、「IoT(Internet of Things)で全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、これらの課題や困難を克服」(平成30年版 情報通信白書※4)するものとされている。その傍らで示された今般の方向性は、IoTがもたらすこうしたつながりを統制しようとするもの、つまりSociety 5.0の実現を通じた情報の統制強化への試みであるとのそしりを免れない。

    IoT家電やコネクテッドカー等に見られるように、機器・装置同士もまたネットワーク上でつながる昨今、電気通信事業法の規定する「電気通信事業」が実際には製造業やサービス業などを含む幅広い業種において営まれており、関係するあらゆる事業者への影響も看過できないところである。

    日本社会のデジタル化により期待される経済活動の活性化や生活の質の向上の妨げとなりかねないこうした過剰規制への方向性は見直す必要がある。拙速に法案を提出するのではなく、オープンな環境の下での公正かつ精緻な議論を改めて実施することを求める。

    ※3 Society 5.0
    ※4 平成30年版 情報通信白書(抜粋)

提言・ニュース