会員セミナー「デジタル経済下における『業務提携』と独禁法の考え方 -公正取引委員会による論点整理のご紹介-」を開催しました
8月29日、会員セミナー「デジタル経済下における『業務提携』と独禁法の考え方 –公正取引委員会による論点整理のご紹介–」を開催しました。
経済がデジタルシフトしていくなか、先端技術やIoTの進展による新しいビジネスの台頭、さらには、社会課題解決などの目的に対応するため、スピード感の確保やコスト削減などの観点から、業種や業界の垣根を越えた「業務連携」が活発に行われるようになってきています。
その一方で、近年のビジネスでは、データの収集や利活用を主眼としており、業務連携も含めて、データの不当な囲い込みなど、競争を制限しかねない独禁法上の問題点も指摘されています。
これまで、企業結合(合併等)においては「企業結合ガイドライン」にて競争環境への評価に関する考え方が示されていましたが、業務連携においては体系的に考え方や論点が示されているものがなく、分野別のガイドラインや過去事例が参照されてきました。
そこで、公正取引委員会の有識者検討会にて議論が行われ、この度「業務連携に関する検討会」報告書が取りまとめられました。
今回は、公正取引委員会の笠原様にお越しいただき、報告書について直接ご説明いただきました。
講師:笠原 慎吾 様(公正取引委員会経済取引局 経済調査室長)
公正取引委員会のスタンスとして「事業者アライアンスを組むことは多くの場合競争上もポジティブ」とした上で、「イノベーションが生まれる競争環境を作ること」が独禁法の目的と述べられました。したがって、イノベーションを生み出す競争環境に悪影響を与える場合については、独禁法上の問題にすべきとの考えが根底にあるとのことです。
また、データが企業競争力の源泉となり、データをもとにした経済の覇権争いが繰り広げられている中、データの収集や利活用に関する業務連携は、多くの場合で競争促進的な効果が期待できるとする一方、データの不当な収集や囲い込みにおける問題も挙げられており、データの取り扱いに焦点を当てた検討が行われたようです。
そのうえで、データ連携型業務連携の具体的形態を整理したうえで、それぞれについて独禁法上の問題となりうる具体的行為事例などをご紹介いただきました。
質疑応答では、コスト共通化の割合が増えればそれだけで協調行動になりやすいとされるのか、検討対象市場の画定は企業結合審査と同じ手法になるのか等、ビジネスの現場からの疑問がぶつけられ、活発な意見交換が行われました。
今後も会員の皆様にとって、有益なセミナーを開催してまいります。
【参考】
◯「業務提携に関する検討会」報告書について(公正取引委員会HPより)
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/jul/190710.html
会員セミナーの様子