「LGBT等性的マイノリティへの理解促進」第1回セミナーを開催しました

2019年8月28日、「LGBT等性的マイノリティへの理解促進」第1回セミナーを開催しました。

初回である今回は、企業実務や個人活動でLGBT等性的マイノリティの理解促進に向けて活躍されている実務家の方々に、ダイバーシティ推進のメリットや現場で心がけるべきことなどについて、座談会形式で様々なお話を伺いました。

講師:Allies Connect 代表 東 由紀 様、freee株式会社 ダイバーシティ推進室長 吉村 美音 様

講師からは、各々の経験や具体例の紹介や、どうやって理解を広げていくかの総論的なヒントを提示していただきました。

講師による意見交換の後、参加者からはそれぞれの立場から、切実で真剣な質疑応答が数多く寄せられました。セミナー終了後も、講師へ相談に訪れる参加者が多くおり、LGBT等性的マイノリティへの理解促進を中心としたダイバーシティ推進への問題意識の高さがうかがえました。

【議論されたテーマ、講師からのアドバイス等】
○ ダイバーシティを推進することのメリット
 ・経営者・意思決定権者としては、自分と異なる視点を取り入れられる。
  従業員としては、心理的安全性が担保される
 ・単一文化の下では暗黙知が存在して閉鎖的になることがあるが、多様性があると意見交換が活発化する
 ・ただし、会社としての経営方針等、社内全員が守るべき統一ルールという例外はあり得る
○ LGBTの当事者の苦労
 ・性的指向や性自認については周囲から見えにくく、本人も自分を表現しにくいので、自己開示しづらく、
  プライベートを詮索される機会そのものから距離を置くために周囲と距離があるように感じられる
 ・トランスジェンダーの場合、自認する性別と体の性別が異なる点を指摘されたりすることを忌避して、
  職場での生活が長続きしなくなるケースがある
○ LGBT理解促進のために、会社として何ができるか
 ・制度面の整備とハード面の整備。社内の福利厚生の整備は取り組みやすいが、
  国の制度などは限界あり。その点を企業がどう補てんするかがポイント
 ・ハード面の整備は、トイレの整備や服装の取扱いなどのほか、性別移行する際の休暇の問題や、
  健康診断の取扱いもある
 ・制度面・ハード面整備と同時に、何よりも理解促進が重要。その際、見える問題から
  1つずつ解決していくことが必要
○ 経営トップにとって社内の理解をどう得るか、何から始めればよいか
 ・アライ(※)を増やして、当事者の問題・課題を代弁して、何が必要かを伝えることが必要
  ※「アライ」とは、LGBTの当事者に理解を示し、支援する人のこと
 ・アライの者にステッカーを配布する等、アライを「見える化」する取組もよい。
  アライとしての知識量の多寡よりも、アライである立場を表現することが重要で、
  LGBTに対する差別的な意識がないことを表明したいという意思があれば、「貼ること」が重要
 ・設備等の整備が困難な場合でも、従業員教育をしっかり行うこと。
  その際、取組に疑問や違和感がある者向けの連絡先窓口を整備すること
 ・会社として課題感を持っていることや姿勢を社内で表現することも重要。
  セクシュアリティの話題をアンタッチャブルにしないこと
○ カミングアウトした人への接し方
 ・カミングアウトする相手方を信頼している証左なので、その勇気にまず感謝を表現すること
 ・当事者が何を求めているかはケースバイケース。個別に対応すればよく、寄り添う意思を持って、
  何ができるかコミュニケーションを密に取ることが大事
 ・人事担当の場合、そのカミングアウトが誰に対してのものなのか、範囲を必ず確認することと、
  カミングアウトの範囲が限定されている場合は秘密を必ず守ること

【質疑応答】
Q:理解促進のための環境整備において、逆にこれを悪用して犯罪に利用する者がいる可能性があると考えるが、そういったイレギュラーに対する方針はあるか?
A:よくある質問。これに対しては、必ずアラートを挙げてもらうようにしている。社内の対応や個人の行動に疑問や違和感があれば、本人に指摘するのではなく専用窓口に連絡してもらうようなことが例。

Q:より深くLGBTへの理解促進をする方法はあるか?
A:現在はセミナーや書籍などのツールが多い。積極的な参加等を推奨する。

Q:理解促進の先のコミュニケーションをどうやって活性化させたいが、どういう取組があるか?
A:従業員調査を行う等現状分析し、その現状を言語化すること。いくら公式な取組が進んでいても、個人単位では理解に欠けることがある。その場合、アライの質向上が課題として見えてくる。

Q:LGBTの方の意識を気にすればするほど、何も話せないのではないかという不安がある。最初の段階でどういうコミュニケーションを取ればよいか?
A:共通の話題選びに困っているのであれば、まずは自己開示が重要。話題をこちらから限定することなく、相手に話しやすいトピックを選んでもらうようにするところからコミュニケーションを取るとよいのではないか。会社としては、勉強会の開催にハードルがあれば、映画上映会などを開くのもよい。

新経済連盟は、今後も会員の皆様に有益なセミナーを開催してまいります。

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