6月17日~23日、イスラエルを視察してきました

6月17日~23日、新経済連盟としてイスラエルを視察してきました。
今回の視察はイスラエル政府が行っている「Young Leadership Program(2015年の日本・イスラエル政府による関係強化決議を受けてイスラエル外務省により開始。45歳以下の日本の将来リーダーをイスラエルに招聘され、イスラエルへの理解を深めるためのプログラム。)」の一環として、新経済連盟用にプログラムを組んでいただいたものです。
視察には、吉田浩一郎・理事(株式会社クラウドワークス 代表取締役社長CEO)、岩田進・幹事(株式会社ロックオン 代表取締役社長)をはじめ、会員企業・事務局から14名が参加しました。
   
イスラエルは近年、スタートアップ大国として注目を集めている国であり、大企業・VC・学術機関・政府・軍等の多様なプレイヤーが有機的に連携・協働した起業エコシステムが形成されていると言われています。
今回の視察の目的は、イスラエルという国の歴史や文化、国家としての在り方を理解するとともに、このようなエコシステムの態様やそこにおける各プレイヤーの働きを把握することも含まれており、「イノベーション・アントレプレナーシップ・グローバリゼーション」を旗頭とする新経済連盟、及び、その会員企業の今後の活動に活かそうというものです。
   
プログラムは政府や学術関係者との意見交換、スタートアップのヒアリング、歴史的遺構や博物館等の視察・見学等、多岐にわたっており、その全てを紹介することはできませんが、特に印象に残ったものを抜粋して以下にご報告いたします。
   
   

   
■イスラエル外務省北東アジア局アジア太平洋課との意見交換
◇概要
・ニューエコノミーの領域でイスラエルは特に進んだ存在。近年、有力なスタートアップが次々に生まれ、グローバル企業からの投資も盛ん。
・日本とイスラエルの関係性は近年、急速に深まっている。2014年にネタニヤフ首相が訪日し、2015年に安倍首相がイスラエルを訪問した。しかし、まだ十分ではない。今後、中身を充実していかなければ。
・イスラエルのテクノロジーは、おそらく日本企業にとって魅力的なのでは。ぜひイスラエルに投資してほしい。イスラエルはスタートアップレベルに、日本はグローバルマネーとマネージメントに長けている。お互いの長所を活かす形で連携できれば。
・イスラエルは、天然資源がなく、まわりを敵に囲まれている。そういった環境の中ではアイデアだけが資源であり、0から1を生み出す能力を伸ばしてきた。
・また軍民の連携は緊密であり、軍事用の技術が民生に転用されて、そこから新たなビジネスが生まれることも多い。
・1990年前後から、移民を急速に受け入れた。ソビエト連邦が崩壊し、旧ソ連のユダヤ人が大量にイスラエルに流れ込んだ。
・イスラエルではシリアルアントレプレナーが多い。起業家は皆、ロングタームの戦略を大切にしており、常に、次に何をするかを考えている。また、特にニューエコノミー分野はフレキシブルでクイックである必要。すぐに意思決定をし、すぐに投資する。
・「ドアを開いておく」のが政府の仕事。そのドアに、企業や大学やスタートアップや投資家が入っていく、というイメージ。

   
   
◇概要
・Yissumは、ヘブライ大学で生み出された知的財産の管理・保護やマーケティングを担当している機関。イスラエルでは、学術がテクノロジーのベースであり、学術機関で研究されたことが民間ビジネスのサービス開発における基礎となっている。
・これまで、53年間で9820の特許が生まれた。最も多い分野は、ライフサイエンスや農業。
・Yissumには2つのVCファンドがつくられており、ヘブライ大学発のスタートアップを中心に幅広い分野に投資が行われている。
・管理しているテクノロジー・知的財産はウェブ上で誰でも閲覧でき、その担当者とコンタクトを取ることができる。
・イスラエルでは、学術機関・政府・企業・軍の四者が緊密に相互連携したスタートアップエコシステムが確立しているが、学術機関は、そのエコシステムの中で最初に役割を果たすプレイヤー。それだけ重要だし、責任も重い。

   
   
■Masschallenge Accelerator Jerusalem ヒアリング
◇概要
・Masschallengeは世界最大規模のスタートアップ支援アクセラレーター。資金調達支援、ネットワーク構築、メンター提供等、スタートアップの成長に必要なあらゆる支援を行っている。
・これまでに、1,211のスタートアップ支援を行い、60,000人の雇用を生み出し、$1.8 billionの資金を外部から調達した。
・スタートアップによるコンペティションを行い、そこで勝ち残ったものを支援する、という形式。コンペはスタートアップコミュニティにおける有識者・専門家を審査員とし、イスラエル、ボストン、メキシコ、英国、スイスにてそれぞれ行われる。
・イスラエルはマーケットが小さいので、そこで生まれるスタートアップは殆どが最初からグローバルマーケットを志向している。世界的な広がりを持つサービスが生まれるのは、こういったもともとのメンタリティも大いに関係している。
  
   
   
◇概要
・HFNはイスラエル最大の法律事務所。Corporate, Tax, Litigation & Dispute Resolution, Banking & Finance, Regulatory/Governmental 等の分野で総合的なリーガルサービスを提供。多くの日本企業もサポート。
・イスラエルでは一年に1000のスタートアップが生まれる。これは8時間に一つの計算。Global Startup Ecosystem Ranking 2015では、テルアビブが5位(1位シリコンバレー、2位ニューヨーク、3位ロサンゼルス、4位ボストン・・)。
・スタートアップエコシステムはテルアビブが中心であり、中でもサイバーセキュリティは特に盛ん。ハイファはメディカルに強い。300のグローバル企業がR&Dセンターをイスラエルに置いている。
・2017年、インテルがMobileyeを$15 billionで買収。本年最大のエグジット。これまで、楽天のバイバー買収、ソフトバンクのCybereasonへの大型投資等、日本企業の動きも活発。
・「『小さく敵に囲まれている』という必要性」「ハードワークな国民」「アントレプレナー精神と国際志向」「政府支援(税制によるインセンティブ、イノベーション認定)」「軍の働き」「失敗に寛容な風土」「VCの機能」「強いネットワーク」「自己表現と創造性を育む教育」等が、イスラエルをイノベーティブにしている要因。
・イスラエルには憲法はなく、統治機構や市民権等、各分野において基本法が存在。ビジネス活動を規定する単一の法はなく、会社法・セキュリティ法・税規則等の個別的な法令が存在。
   
   
◇概要
・Taglit-Birthright Israelはユダヤ人の若者を世界中に派遣するプログラムを行う機関であり、それが創設した「イノベーションセンター」では、イスラエルから世界に羽ばたいたスタートアップやイスラエル発のテクノロジーが紹介されている。
   
   
<紹介されているスタートアップ、テクノロジー>
・農業分野:biobeeNetafimGreenIQ
・科学分野:WaterGenPixtier
      3D Printing
・安心・安全分野:Silent Eye、Iron Dome、JHMCS II helmet、Hermes 9000
・輸送分野:Electroad、MobileyeWAZE
・医療・健康分野:ReWalkSoftWheelOrCam、Pillcam
・宇宙分野:Skyfi
   
   
【その他】
■Welcome Reception with the Israel-Japan Friendship Society and Chamber of Commerce
・イスラエル・日本親善協会&商工会議所が主催のレセプションに新経連視察団が招待される。吉田理事が挨拶。

   
   
■エルサレム旧市街(Old City of Jerusalem)
・神殿の丘・嘆きの壁(ユダヤ教)、聖墳墓協会(キリスト教)、岩のドーム(イスラム教)等、各宗教にとっての最重要の遺跡が集まる。
・ユダヤ教徒地区、キリスト教徒地区、ムスリム地区、アルメニア人地区、の4つの地区に分けられ、現在でも多数の人が暮らす。
  
      嘆きの壁
   
   
■ヤッファ(Jaffa)
・テルアビブのヤッファ地区。古代都市からの歴史を有する。
  
   

   
   


   
   
この他にも、PlayBuzz, Amdocs等の企業やスタートアップのヒアリング、大学教授やジャーナリストとの意見交換、Yad Vashem Holocaust Museum, Israel Museum, Tefen Industrial Park等、博物館・ミュージアムの視察見学、マサダ遺跡や死海への訪問等、極めて中身の濃い、充実した内容であり、参加者は皆、ここで得たものをそれぞれの所属元での活動に大いに役立てることができると思います。
   
プログラムを企画していただいたイスラエル大使館の皆様、現地での案内をしていただいたツアーガイドの方々、視察・意見交換等に応じていただいた皆様、その他、このプログラム実施に関わったすべての皆様、本当にありがとうございました。
   
   
   

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