12月15日、会員セミナー「『超空間』の日常化~テレイグジスタンスとは何か~」を行いました

2016年12月15日、会員向けセミナー「『超空間』の日常化~テレイグジスタンスとは何か~」を行いました。
「テレイグジスタンス」とは、遠く離れた場所にある人型ロボットを自分の分身のように操る技術です。特殊な装置を付けた操縦者が手や首を動かすとロボットが同じ動きを再現し、ロボットを通して触覚・視覚・聴覚等、感覚の情報が操縦者に共有されます。
   
■参考:
・東京大学舘研究室チャンネル: https://www.youtube.com/user/tachilab
・Tachi Lab:http://tachilab.org/
   
科学技術振興機構(JST)では、この分野の第一人者である舘暲・東京大学名誉教授を研究代表者に迎え、テレイグジスタンスと身体性メディアの研究開発を進めておられます。本セミナーでは、JST戦略研究推進部主任調査員である上田幸弘様に、最新の研究状況と将来の活用可能性についてお話しいただきました。
   

講師:上田幸弘様(JST戦略研究推進部主任調査員)
   
今年はVR(バーチャルリアリティ)元年と言われますが、VRがコンピュータ空間に人間が入っていくものであるのに対して、テレイグジスタンスはロボットを用いて現実世界に対する直接的な働きかけを行うものです。その一番の特徴は操縦者とロボットで視聴覚に加え触覚が共有されることであり、舘名誉教授は力・振動・温度の3つを「触原色原理」として統合して捉えることで、触覚の計測・伝送・編集を可能とする技術の開発を進めています。これにより、例えばロボットが雪を触ったら、操縦者も雪を触ったように「冷たい」と感じ、ロボットの持っているコップにビー玉が落ちたら、操縦者も「持っているコップにビー玉が落ちた」と感じることができます。
   
   
テレイグジスタンスは様々な場面で活用が見込まれており、
   
・離れた場所にいる患者に対して医師が医療行為
・人間が入っていけない危険な場所で作業
・体が悪くて出歩けない人が海外旅行やスキューバダイビング
・極小ロボットを使ってミクロの世界を体験
・伝統工芸等の職人の技術をロボットに記録させて伝承
   
など、夢は広がります。
   
   
イノベーションを発掘・推進する米国の財団「X Prize Foundation」が主催するコンペ「Visioneers 2016 summit」では、ANAが舘研究室と連携して「ANA AVATAR X PRIZE」というテレイグジスタンスに基づいたプロジェクトを提案して見事入賞しており、この夢は既に現実化に向けた入口に入りつつあると言えます。
技術を更に進めるには何より研究開発が必要であり、上田様は、「産官学みんなで集中的にやれば事業化も早まる。ぜひ日本の技術を育ててほしい。」と強調されました。
   
少子高齢化、人口減少が進む我が国において、空間を超えた生き方・働き方が可能になるテレイグジスタンスの可能性は計り知れません。上田様の話を通じて、未来を先取りした社会の絵姿を垣間見ることができました。
   
上田様、そしてご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。
   
   
   
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