“「新経連and北海道!」若手・外国人材が集まる北海道へ”を開催しました
新経済連盟(新経連)は、「新経連and全国!!」第6弾として、5月19日に「新経連and北海道!」を開催しました。
このプロジェクト最初のリアルイベント、そして新経連としてはじめての北海道でのイベントであるにもかかわらず、会場のIKEUCHI LABには40名を超える方々にお集まりいただき、大盛況のうちに終えることができました。
北海道は、日本を代表する食と観光の宝庫として知られる一方、24年連続の人口減少という現実を抱えています。人口200万に迫る道都・札幌でも優秀な人材が道外で就職する傾向にあり、若く優秀な人材や外国人材の確保が北海道経済の持続的発展のための喫緊の課題となっています。
そこで今回は、札幌市内で介護事業を展開するらくらグループ代表の浅沼静華さん、北海道大学教授で同大学の外国人留学生プログラムを統括する佐々田博教さん、そして、シンガポール出身で北大を卒業した後、道内企業に就職したゼン・シアックさんをお招きし、若手・外国人材が北海道に定住するための環境整備に何が必要かを議論していただきました。モデレーターは道内でも事業を行う楽天グループの副社長で当連盟顧問の平井康文が務めました。
冒頭、特別ゲストとしてお招きした土屋俊亮副知事にご挨拶いただきました。千歳市で展開されている半導体産業、石狩市のデータセンターをはじめ、日本のデジタル産業の重要な拠点となるべく、大学・高専などの教育機関等と連携し、人材育成を進めているとのご説明がありました。また、国内外の多くの観光客の高い人気を維持しつつ、エネルギー・デジタル・人材を呼び水に、優秀な人材を北海道に引き込むなど、北海道経済の発展を目指しているとのお話がありました。
そして、ここから平井顧問のモデレーションのもと、各登壇者から自身の活動内容の他、それぞれのお立場で北海道の若手・外国人材の現状についてご報告いただきました。
最初に、浅沼さんからは、らくらグループの事業ビジョンである「粋に生きる世界へ」を基に、シニア×施設のマッチングサービスの展開や未来のセミシニアに向けて、介護サービスに留まらず、食・健康・住まい・職などの情報を提供できるプラットフォームビジネスを立ち上げていくことについてお話しいただきました。また、ご自身の海外経験を踏まえ、今後、日本は欧米同様にジョブ型雇用に移行していく可能性が高いことから、採用面接の際、求職者は自身が出来る仕事の範囲を具体的に明示していく必要性が高まっていくだろうとの言及がありました。
次に、佐々田さんからは、ご自身が副課程長を務めている北海道大学の現代日本学プログラム課程についてご説明がありました。本プログラムには、2015年の開設以降、一学年あたり約20名が在籍し、日・英のバイリンガル教育を行っていることが一番の特徴です。北米や欧州からの留学生が多く、卒業生も含めた累計の出身国数は40を越えることより、非常に多様な留学生に選ばれています。入学後2年間で日本語を習得した後、3年目からは日本人の学生と一緒に通常の授業を受講します。さらに、日本語で卒業論文を執筆し、卒業する学生も多くいらっしゃいます。卒業後は、国内・外資企業への就職の他、国内外の大学院、MBA取得など、幅広く活躍の場を移しているとのご説明がありました。
最後に、ゼンさんからは、現代日本学プログラム課程で学んだこと、外国人として国内企業で働くことの長所や難しさ、また、外国人として欲しかったサポートについてお話しいただきました。プログラムを受講している生徒同士で母語や日本語力が違う点や社会人経験を経てから入学される方もいる点から、自身と背景の全く違う人と学習を進めていくことで、非常に勉強になることが多かったとのお話がありました。一方、北海道で生活していく上で大変だったことの中に、企業の外国人向けの雇用率・就職情報の発表が十分でない点や、外国人によるネットワークが少なく相談できる場が整っていない点を挙げられていました。また、生活面では税金や保険といった日本での生活に必要なことについて学べる場が欲しかったとのお話もありました。
続いて行われたディスカッションにおいてまず初めに、各政令指定都市の10代・20代の割合を比較したデータが1位が福岡(22.05%)であるのに対し、札幌(19.23%)は14位であることをめぐり、議論が交わされました。
平井顧問は、北海道は、データセンター、半導体の両方が集積される点や、楽天グループの外国人エンジニアに人気がある点をあげて、このデータより多くの若い人材が札幌に定着しているのではないかと問題提起しました。
これに対し、佐々田さんは、北海道は大学4年間を学ぶうえでは大変魅力的な地であるが、希望の就職先を求めて、道外に移る学生が一定数いると指摘しました。そして、外国人材の定着については、就職面の支援だけでなく、医療、法律、子供の教育等、生活面の様々なサポート体制を充実させ、かつそれを積極的に発信するべきとの言及がありました。また、企業が優秀な外国人材を集めるには、外国人の価値観を尊重することが重要で、能力に見合った報酬の提示、ワークライフバランスの取れた環境の整備を行い、外国人材が快適に勤務してもらえる様な受け入れ体制を用意する必要があるとの指摘がありました。
浅沼さんからは、若手人材の定着を進めるためには、社員が自由に自分の能力を発揮できる部署、あるいは事業を経営者が興したうえで、自社で出来る仕事内容を具体的に提示し、社員自らがキャリアプランを描ける魅力ある環境を提供することが重要との発言がありました。外国人材採用にあたっては、時間にとらわれない柔軟な働き方が必要で、自由に能力を発揮できるように、雇用主・雇用者双方で良好な関係性を作れるかが大切になってくるとのことでした。
ゼンさんからは、日本で働いて感じる独特の習慣について最初は戸惑うことが多かったとの発言がありました。その中でも、日本の文化を尊重しつつ、一方で自身のキャラクターも見失わないように振舞われているとのことでした。今後、北海道の魅力をどのように自国の人に伝えるか、まずは北海道に住んで働いてみて自分が経験した良さを外国人に伝えていきたいとの発言がありました。
上記の通り、本イベントでは多くの貴重な意見やアイデアが交わされ、有意義なディスカッションが行われました。まだまだ議論したいことが多くありましたが、時間の制約上ここで終了となりました。本イベントを皮切りに、新経連では今後も北海道にて定期的なイベントの開催等を実施できればと思います。
なお最後に、新経連一般会員であり、システム開発事業を行っている日本ルクソールシステム株式会社 専務取締役の工藤 浩さんより、自社が母体となって設立された女子バレーボールチームのアルテミス北海道のご紹介がありました。アルテミス北海道は、北海道出身のメンバーを中心に構成されており、2023年〜2024年シーズンのVリーグ参入が決定しております。
【イベントの様子】