内閣府による「エネルギー・環境に関する選択肢」に対する意見募集について、意見書を提出しました。

一般社団法人新経済連盟

1.意見の概要

原発稼働のリスク低減をどこまでできるかという重要な情報を明確に示さない選択肢提示は不適切です。当該リスクが残るのであれば将来的に原発依存度をゼロにするシナリオの選択肢及び工程表を早急に作成すべきです。

2.意見及びその理由

【意見】

(1)今回の議論の発端となった「原発リスク」について、安全方策等によってどこまで低減できるのかを明らかにしないまま、2030年という一時点でのエネルギー源の構成比率と原発依存度のみを3つの選択肢から選ばせる方法は、国民からの意見を集約し政府がエネルギー政策を決定する手続きとしては不適切であるので、一旦撤回するべきです。

(2)安全方策等によって原発稼働におけるリスクを一定程度低減したとしても依然として許容できないリスクが残るのであれば、将来的に原発依存度をゼロにするために可能なシナリオの選択肢及び工程表、具体的な未来像といった骨太なエネルギー政策を示したうえで最終的にどのような政策を選択するか国民に判断を求めることが必要です。

(3)上記の検討及び提案を行うためには、具体的な政策提案や影響分析等が必要となりますが、既に出されている民間からの各種提案等も参考にしながらそれらの国民的な叡智を結集し具体的な選択肢の提案の作成作業を行う仕組みを構築するべきです。

【上記意見の理由】

(1)本年6月29日のエネルギー・環境会議決定「エネルギー・環境に関する選択肢」において「原子力は安全であるという大前提が大きく揺らぎ、原子力発電に依存したエネルギー選択を白紙から見直さなければならなくなった」とあるとおり、「原子力の安全確保と将来リスクの低減」が議論の発端と理解します。にもかかわらず、今回示された選択肢では、原発の比率をどこまで下げるのかという議論に矮小化されるとともに、15シナリオと20~25シナリオを取った場合のリスクはどこまで低減されるのか、それは許容できるレベルなのかが不明確なまま、特に20~25シナリオを取る場合は「原子力及び原子力行政に対する国民の強固な信認が前提」とあるだけで国民が知りたいリスクの内容が知らされていません。

(2)また、今回示された選択肢の案では、2030年という一時点でのエネルギー源の構成比率と原発依存度のみが示されているだけで、それぞれのシナリオにおいて、原発政策はどのような方向で行われるのかが全く明らかではありません。原発の今後の新増設の有無やその詳細、原発再稼働問題にどのように対応するのか、具体的に稼働を想定している原発はどこなのか、原発の安全規制のあり方、核燃料サイクル問題等原発に係る根本的な政策の方向性の道筋が示されていません。

(3)さらに、震災後の稼働実態や需給状況等も踏まえたうえでの電力需給の見通しが必ずしも明らかでないほか、省エネルギー・再生エネルギーの供給見通し、経済への影響等の算出根拠等も必ずしも明らかではありません。その他、選択肢では、「シナリオを検証するに当たり踏まえるべき視点」として「需要家主体のエネルギーシステム改革」との記述があるものの、シナリオごとにその改革がどのように違ってくるのか(発送電分離、デマンドレスポンスなどを含め自立分散型のシステム改革をどこまで徹底させるのか等)は明らかになっておらず、電力システムの改革の方向性やそれによる新たな社会像を選択させるという重要な視点が抜け落ちており、「国民の選択」として適切ではありません。

(4)国民に選択を迫るとすれば、まずは、国民に対して、原発稼働を仮に継続するとした場合に、種々の安全方策等によってどこまで「原子力の安全確保と将来リスクの低減」ができるのかを情報提供するべきです。許容できないリスクが残り続けることが明らかであれば、将来的に原発依存度をゼロにするために可能なシナリオと工程表の選択肢を早急に複数提示したうえで最終的にどのような選択を行うか国民的議論を行うことが必要不可欠と考えます。

(5)原発問題を含めエネルギー政策をどうするかについては、国民の中でも重要な問題となっており、様々な提案や議論も行われています。このような中で、国民に選択を迫るのに十分な情報が示されないまま、拙速にパブコメを終了し政府が判断を行うことは明らかに適切ではないので、仕切り直しをし、国民の多様な意見を吸い上げる仕組みを構築するべきと考えます。

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