2024年3月17日から20日までの3日間、新経済連盟(以下、JANE)事務局は韓国を訪問しました。現地では韓国ベンチャービジネス協会(KOVA)との面談・協定に関する覚書の締結に加え、現地企業のオフィスを訪問し、意見交換を行いました。今回はそのうち、二社のVCに対して行った、韓国スタートアップの現状や日本への期待感などに関するヒアリングの内容を抜粋してお伝えします。
取材日:2024年3月18日、19日
※KOVAとの面談・協定に関する覚書の締結に関する記事はこちら
■Kakao Investment
―組織の概要を教えてください
インターネットサービス会社である株式会社Kakaoの系列会社として出資・支援を展開しています。16人と小規模な人数で活動しており、シナジーが見込めそうなところには積極的に投資を行っています。主にAIやディープテック、コンテンツ領域を中心に投資を検討しており、日本においてはDXの観点からSaaS方面の投資も検討しています。
―今後成長の見込まれる分野は何ですか
特にコンテンツやエンタメ業界における、AI分野の伸びしろが大きいと考えています。グローバルの観点で韓国語が言語的にマイノリティであることから、韓国語に対応したAI開発は他の言語と比べて後回しにされる傾向があります。そのため、国内スタートアップが自国での開発に力を入れています。
―国内経済の課題は何ですか
ソウルへの一極集中が課題です。釜山をはじめ他の自治体も地元企業に対し出資などの支援を行っていますが、出資を受けてもすぐソウルに移転してしまうケースが多く見られ、地方に優秀な人材が集まりにくい面があります。
―韓国ではどんな人材が起業していますか
昔はコンサル出身者が多く見られましたが、最近は理系を中心とした修士卒も多い印象です。個人的には、大学在学中に起業することで卒業年次を延期できる制度の創設などが起業ブームの要因になったのではと考えています。
―兵役によって事業から離れざるを得ないなど、影響はありますか
起業すると兵役を30歳まで延期することができる制度があります。また、理系博士号の取得など一定の条件のもと、兵役のかわりにエンジニアとして従事できる制度もあります。そうした免除制度の影響により創業者が増加するなど、ポジティブな効果もあったと考えられます。
―日本への期待感はありますか
東南アジア諸国と比べると、日本向けSaaS商材は浸透すると売り上げが伸びやすい印象があります。現在はJETROなどの関係機関や様々な金融機関が、日本へ進出する企業に向けた支援制度を整えつつあります。こうしたことから、今後は日本企業への直接投資や、投資先企業に日本に進出してもらうといった可能性もあると考えています。
■韓国ロッテベンチャーズ
―組織の概要を教えて下さい
2016年に創立されたロッテグループのCVCであり、CVCとしては韓国で唯一アクセラレーションプログラムも込みで展開しています。
―どのような内容で支援を行っていますか
L-CAMPというプログラムの中で多方面からの支援を行っています。具体的には、審査を通過した企業に対し初期費用やオフィスの提供をしたり、法律・会計等の分野のメンターを派遣したり、海外進出支援などの伴走支援を行っています。
―日本への期待感はありますか
2023年10月に東京でのイベント「2023 L-CAMP JAPAN」を初めて開催しました。日韓企業の協業や投資などに関するセッションなどを実施し、勢いのあるスタートアップの海外進出の支援になるようなイベントとなりました。
他には、韓国政府の中小企業・スタートアップ省も日本のエコシステムに非常に注目している印象があります。加えて、韓国中小企業ベンチャー企業振興公団(KOSME)は、港区虎ノ門のCIC Tokyo内に東京事務所を有しており、定期的にスタートアップイベントを開催しています。
このように日本は韓国にとって、米国・ベトナムと並んでホットな進出先であると考えています。
―JANEへの期待感はありますか
日本のスタートアップについて聞きたいとき、誰にコンタクトすればいいか分からないことが多いため、そうした場面で協力いただけると助かります。また、Evening Meetup!やJX Live!などのイベントに関心があり、韓国からも是非参加してみたいです。
JANEは今後も、両国間のネットワーク強化に向けた取り組みを進めていく予定です。
▼Kakao Investment
https://jp.kakaoinvestment.com/?redirect=no
▼韓国ロッテベンチャーズ
http://www.lotteventures.com/main