2026年1月20日(火)、新経済連盟(以下、新経連)は、新春特別企画として「Evening Meetup! (EMU) by 新経連 年始スペシャル!」を開催いたしました。
今回は冒頭に特別セッションとして「JX Awards受賞者と語るJX(Japan Transformation)実現への未来図」を実施。「JX Awards 2025」を受賞された注目の起業家3名を迎え、創業への想いや困難を乗り越えた哲学など、日本経済の変革に向けた熱い議論の様子をレポートします。
▼「Evening Meetup!(EMU) by 新経連 年始スペシャル!」について
https://jane.or.jp/proposal/event/26960.html
▼特別セッション「JX Awards受賞者と語るJX(Japan Transformation)実現への未来図」
【登壇者】(以下、敬称略)
岩佐 凌(エイターリンク株式会社 代表取締役CEO)
加藤 真平(株式会社ティアフォー 代表取締役 執行役員 CEO)
岩崎 由夏(株式会社YOUTRUST 代表取締役CEO)
【モデレーター】
程 近智(モデレーター/新経済連盟 幹事)

1. オープニング:失われた35年を「創造の35年」へ
程:本セッションのテーマであるJX Awardsは、新経済連盟が10周年を機に打ち出したビジョンに基づき、日本を「人・知・財」が集まる国へと変革することを目指して創設されました。日本は長く「失われた35年」という停滞期にありましたが、私自身も長くコンサルティングの世界に身を置いてきた一人として、その責任を感じるとともに、新しい世代の台頭に大きな希望を抱いています。
今、スタートアップと既存企業が真剣にパートナーシップを組み、共にグローバル市場や新産業を創造しようとする本気の機運が高まっています。これからの35年は、停滞ではなく「新しく創造する35年」になるはずです。本日は、その中核を担うJX Awards 2025の受賞者の皆さんに、その挑戦の軌跡とビジョンを語っていただきます。

2. 受賞者自己紹介と事業の核心
岩佐:エイターリンクはスタンフォード大学発のスタートアップです。私たちの核となる技術は、マイクロ波を用いて電力を「ワイヤレスで中距離に飛ばす」というものです。もともとは大学で10年以上、心臓ペースメーカーの小型化など、埋め込み型医療デバイスの研究をしてきました。 従来のペースメーカーは数年ごとに電池交換の手術が必要でしたが、私たちの技術を使えば、デバイスを従来の1000分の1のサイズまで小さくし、体の外から給電することが可能になります。現在は医療だけでなく、FA(工場自動化)やビルマネジメント、小売分野などへも展開しており、すでに売上の約7割は海外が占めています。
岩崎:YOUTRUSTは、信頼でつながる「キャリアSNS」を運営しています。私はかつて量子化学を研究していましたが、キャリアとしてはDeNAで中途採用を担当していました。当時、自分が転職活動をしてみた際に感じた不自由さや、「履歴書を書いて猫をかぶって面接を受ける」という形式的な文化を変えたいと思い起業しました。 私たちのサービスは、単なる転職サイトではありません。転職を急いでいない「潜在層」の方々が、副業やボランティアなどを通じて緩やかに繋がり、新しい機会を逃さずストックしておける場所を目指しています。
加藤:ティアフォーは創業10年目、大学発のスタートアップで、自動運転ソフトウェア「Autoware」をオープンソースとして世界に無償公開しています。 自動運転の世界にはテスラやウェイモのような強力なプレイヤーがいますが、彼らは特定の領域に特化した垂直統合モデルです。対して私たちは、オープンソースの力を活かすことで、工場内の搬送から乗用車など、あらゆるモビリティに自動運転を実装できる仕組みを作っています。この「誰もが使える」モデルで、移動の価値を再定義することが私たちのミッションです。

3. 「壁」を乗り越える哲学
程:起業家には必ず困難な「壁」が立ちはだかります。それをどう解釈し、乗り越えてこられたのでしょうか。
岩佐:私は創業時、周囲のほぼ全員に「ワイヤレス給電なんて終わった技術だ」「誰も成功していない」と反対されました。しかし、「みんなが反対するからこそ、成功した時のリターンが大きく、可能性がある」と考えたのです。 また、私は経営において「思考の同期」を重視しています。毎年アップデートする150ページの事業戦略ドキュメントを全社員に配布し、全員が同じ解像度で未来を見られるようにしています。
岩崎:私の原動力は「野心」です。起業直後、DeNA創業者の南場さんに事業計画を見せた際、「数字が小さすぎる。こんな数字で満足するなら逮捕だ」と猛烈に叱咤されました。その時に「DeNAを超えろ」と言われたことが、今の私の支えです。 「女性一世代で15兆円企業を作る」という目標をあえて公言することで、自分にプレッシャーをかけ、逃げられない状態を作っています。それが、日本全体のGDPを押し上げることに繋がると信じています。
加藤:僕は少しドライかもしれませんが、「壁はない」と思っています。壁と感じるかどうかは単なる解釈の問題です。 ティアフォーがオープンソース戦略をとる理由は、究極の「無敵の状態」を作るためです。100人の敵をなぎ倒すのではなく、「敵が一人もいない状態」を作ることが、日本発のスタートアップがグローバルで勝つための合理的な生存戦略だと考えています。

4. JXに向けた将来へのビジョン
程:最後に、皆さんが描くJXの最終的なゴールをお聞かせください。
岩崎:日本の労働市場において、転職潜在層は約6割と言われています。この層の人たちが、自分の可能性を信じて流動的に動けるようになれば、日本経済のポテンシャルは劇的に向上します。この「人材流動性の向上」こそが、私の使命です。
加藤:まずは、人が介入しない「レベル4」の自動運転を地方自治体などと連携して実装し、地域社会の生活の質を格段に上げることです。長期的には、MicrosoftやNVIDIAを超える価値を創出し、それが同時に学術的な発展にも寄与するような、新しい産業のあり方を示したいと考えています。
岩佐:歴史を振り返れば、ハーバー・ボッシュ法が農業革命を起こしたように、テクノロジーが人類の生産性を飛躍させた瞬間があります。私は、生体情報と環境情報がリアルタイムで融合する世界を創ることで、人類の生産性を次のステージへ引き上げたい。今期は15カ国への展開を予定しており、グローバルでその変革を主導していきます。

程:お三方のような、既存の枠組みを疑い、圧倒的なビジョンを持って行動するリーダーこそが、これからの35年を牽引する力となります。JXアワードの選考委員として、この三氏を選んだことは間違っていなかったと確信しました。日本を変える彼らの挑戦を、ぜひ皆で応援していきましょう。





