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山形・上山・天童×WILLER 『観光の「商流」で勝負する最先端DMO』

山形・上山・天童 x WILLER
『観光の「商流」で勝負する最先端DMO』
   
   
   
   
☆今回のキーパーソン
青木哲志 山形市商工観光部観光物産課 広域観光推進主幹
 H21年4月山形市商工観光部観光物産課配属、8年目。
 主な担当事業:
 広域連携事業を主に担当
 (1)観光圏整備事業「めでためでた♪花のやまがた観光圏推進協議会」事務局担当
 (2)「東北六魂祭2014山形」チームリーダー
 (3)山形・上山・天童三市連携・DMO構築による観光客誘客事業グループリーダー
   
◇取材協力:
   
はじめに:
DMO:Destination Management/Marketing Organizationの略。様々な地域資源を組み合わせた観光地の一体的なブランドづくり、ウェブ・SNS等を活用した情報発信・プロモーション、効果的なマーケティング、戦略策定等について、地域が主体となって行う観光地域づくりの推進主体(「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」より)。
日本版DMO:候補となり得る法人を観光庁に登録、登録を行った法人及びこれと連携して事業を行う関係団体に対して、関係省庁が連携して支援を行うとされている。山形市・上山市・天童市の三市は「日本版DMO候補法人」第1弾として登録済み。2016年度中に「株式会社DMCやまがた」を設立予定。
   
   
旅行形態の変化
   
――― 山形の観光について感じていた課題とは
まず他の地域でもそうだと思いますが、少子高齢化・人口減少によって地域経済がだんだん縮小し、同時に観光客数も右肩下がりに減りつつあるという状況があります。それに対して、外から来てくれるお客様を増やし、地域経済を活性化させようというのが観光による地方創生のねらいです。さらに、国内の旅行マーケット自体が縮小していく中で、外国の方にも来ていただこうという流れもあります。
   
私は観光を担当して8年目になりますが、8年前というのはちょうど旅行形態が変わってきた時期でした。 1つは団体から個人へ、という変化。高度成長の時代には職場や地域の団体旅行があり、温泉や観光地巡りのツアーが組まれて地方にどーんと送客されていましたが、そういう時代ではなくなりつつありました。もう1つの大きな変化は、個人がインターネットを使って自分で情報を集めるようになったこと。みんながスマホを持つようになり、現地に着いてからでも何でも調べられます。
その結果、旅行会社を通じた団体旅行は減り、全体からするとシェアは4割くらいになっています。6割は個人がインターネットを使って、宿・アシ(交通手段)・食事などを自分で探し、選ぶようになっています。
   
この変化は地域にとって大きな変化です。つまり、地域の側でも個人に対して情報を届け、「直販」していかなければいけないということです。自分たちでしっかり情報発信し、お客様から選ばれる観光地にならなくてはいけません。それが早くから出来ていた観光地などが今も強い。
山形で言えば有名な蔵王温泉のほかに、天童温泉、上山温泉がありますが、そういったところのお客様はやはり団体中心のまま、その受け入れ態勢のままでした。これまでのように誰かがお客様を送り出してくれるのを待っていた。どこに自分たちのお客様がいるのか見ていない、つまりマーケットを見ていない、ということです。
   
地域の問題として、旅行形態の変化・マーケットの変化に追い付いていないという状況がありました。
   
 青木哲志 様
   
――― なぜDMOだった?
1つは、旅行商品の作り方を変える必要があったということです。
今はお客様・ユーザー側で欲しい情報はインターネットを使って深堀りできます。あれが食べたいというような自分の興味のあることはとことん調べられる。一方でこれまでの旅行商品では、地域の旅館とは契約していても、たとえばおいしいかき氷が食べられる小さなお店と契約して旅行プランに入れる、ということはできていなかった。なぜできないかといえば、旅行商品を作る側が地域のことをわかっていない、勉強できていないからです。一般のユーザーのほうがよく知っていたりする。“いま流行っているあそこのかき氷”などの魅力ある素材があっても、契約審査などに時間がかかってしまうという問題もあります。
   
それならよくわかっている地域側で旅行商品を作り、市場に出そうということです。たとえばサクランボ狩りができる商品を自分たちで作り、サクランボ農家とは仕入れ値はいくら、実際に売れたら手数料はいくらという契約をします。旅行に来る個人にとっても、地域側が法人化していれば申し込みや精算が1ヵ所でできる。今までは何で移動して、宿泊はどこにして、何を体験して何を食べて、とそれぞれ自分でやらなくてはなりませんでしたが、それを地域側でまとめてサービスとして提供するということです。
   
そうやってお客様とマーケットのほうを向いて、地域みんなでおもてなしをしよう、お客様目線でやっていこう、というのが私たちのDMOのねらいです。
   
――― DMOの組織はゼロから?
私がはじめに関わったのは観光圏整備事業でした。当時観光庁が進めていた政策で、「ATA(エリア・ツーリズム・エージェンシー)」という組織を作り、2泊3日以上の滞在型観光を目指す事業です。従来の団体旅行はほとんどが1泊2日で、来て、宿に泊まって、宴会をして、次の日には帰るというのが定番でしたが、それを変えようというものでした。
この事業に山形市、上山市、天童市の3市を中心に、周辺の7市7町・14自治体で取り組みました。今となっては笑い話ですが、1週間で130ページある整備計画・実施計画を作った。私がまとめ役をさせてもらい、20人くらいの担当者みんなで徹夜しながら作りました。
   
観光圏整備事業は平成22年から26年までの事業でしたが、このときの流れがDMOまで続いています。このときにわかったことが、法人化し、旅行業を取り、地域側で旅行商品を作り売れる組織にしなければいけないということです。ATAは仕組みであって法人ではありません。これだと決済や精算はできない。そうしなければ、ただAコース、Bコースがあります、というだけの組織になってしまう。市場の流れ、「商流」に乗れないということです。
  
   
観光の商流に乗る
   
―――「商流」とは?
旅行業界には図のような、①~⑩の流れがあります。
資料提供:WILLERツーリズム&コンサルティング㈱ 小髙直弘様 一部修正
   
   
①素材②造成③商品④検品が、観光資源のある地域側の領域です。検品というのは、万が一雨が降ったら・事故が起きたらというときのルールです。それから⑤商流化があり、これ以降はお客様・ユーザー側と関わるマーケットの領域になります。地域側で④まで作り、ユーザー側に渡すには旅行業界の流通に乗せなくてはいけない、つまり「商流化」しなくてはいけないということです。そこから⑥告知、⑦販売、⑧受注・手配という段階があり、⑨商業化で利益を上げ、関わった人に利益が分配されます。最後に地域側で⑩来訪・精算するという流れです。
   
今までは地域側では①~③までしかやっていませんでした。しかしDMOでは④~⑩も地域でやることになります。そこではお金の流れも発生し、契約もある。ですからきちんと法人化し、旅行業を持っていなければできないということです。
全国でもさまざまなDMOが出来ていると思いますが、観光のモデルコースを作ってそれをPRするところまでは出来ても、その先の受注・販売し精算までを意識している地域は少ないかもしれません。しかし、モデルコースを作って紹介しているだけでは地域経済への効果は期待できません。
   
   
――― 地域の力で人を呼ぶことが必要?
単に人が来るだけなら、そんなに難しいことではありません。たとえば大きなイベントをやれば、人はたくさん来てくれるかもしれません。ですが、1年を通して見れば谷間が出来てしまう。観光は関わる業者も多いですが、谷間があると、一時的には人手が必要になってもアルバイトで足りてしまうことになる。反対に、ピークの部分が減ってきていたとしても、谷間の時期が上がれば雇用を生みます。
私たちは観光という切り口で地域に産業を興さなくてはいけない。ただ人が来てくれればいいというのは違うと思います。お客様に来ていただいて、そこで地域にお金が落ちて、さらにお金が回ることを考えなくてはいけません。
   
ただ人を呼ぶという競争には限界があります。昨年、地方創生交付金ということで全国で割引の宿泊券が発売されたと思いますが、そのときに考えたのは、同じことをして全国と勝負しても負けてしまうということ。1万円の宿泊券があったら、みんな湯布院とか人気のところに行きたいでしょう、ということです。そこでWILLERさんと相談し、山形市としてWILLER EXPRESS高速バスの運賃助成を行いました。それと県から市町村に割り当てられる宿泊券とを合わせてアピールしようと。
さらに、宿泊券はネットで販売されたものが多かったと思いますが、旅行会社にパッケージ商品として提案してもらうことになり、20社以上から提案がありました。多いところでは1社から20本以上の提案がありましたが、全て不採用になったところもありました。ただ宿泊客を山形に送客すればいいというプランが提案されるなど、事業の趣旨が理解されていなかったからです。
たとえば50人のお客様に来ていただいたとして、蔵王温泉に入って、泊まって、次の日の朝早くに出発し県外に出てしまうというのでは意味がありません。地域での滞在時間を長くして、お金を使ってもらうことを考えなければ、ただのばらまきで終わってしまうでしょうと。それを1件1件審査し、話し合って理解してもらいました。
このときに旅行会社との販売ルートの開拓ができたのは、DMOにとって大きかったと思います。
   
――― 3市連携の経緯とは?
観光圏整備事業は“事業仕分け”もあって5年で終了し、山形市として補助金を受けたのは1年だけでした。その5年間私がまとめ役としてやらせてもらい、次にDMOというメニューが国から出てきたときにも7市7町でという思いはありました。ですが、観光圏整備事業がいったん切れてしまい、担当者も自治体では3年で変わってしまうことが多い。人が変わってしまうと最初の熱い気持ちというのは途切れてしまいます。ですから難しいかなという気持ちはありました。
一方で、山形市としては地方創生という流れの中でDMOに取り組んだほうがいいという意見がありました。ただ、そういう話になったのは申請書の締切りの3日前。観光圏整備事業の時も立ち上げは山形・上山・天童の3市から始まりましたが、今回も人のつながりもあって3市で連携することになり、一気に準備を進めました。
   
いま全国から申請されているDMOにもいろいろなタイプがあると思いますが、標準的なものは観光協会を法人化するというやり方です。ただ観光協会は行政からの補助金で運営されますので、自立して自己責任で、ということは難しい。今回のDMOは新しいやり方に挑戦していくので、今までやってきたことはある程度否定しなくてはいけません。そこで新しく法人を作り、株式会社にしようということになりました。株式会社にするということは、利益を上げて自立しなければいけないということです。
   
旅行業界の流通というのは、A社・B社・C社の旅行会社があるとすると、そこから旅行商品の販売の方向はシャワー状、一方向にしか流れません。横には動かず、A社で作った商品をB社やC社で売るということはありません。しかし今回私たちが会社化すると、旅行会社と契約を結び、商品を取引することになります。旅行業界は特殊でそういう流れがありませんでしたが、普通の小売などの物流と同じです。
これが会社化することのひとつのポイントですが、なかなか理解されないところでもあります。地域側はこれまで商品にするところまでで、売ることはやってこなかった。これからは自分たちでお客様や旅行会社に売っていくことになります。
   
   
「関係の質」から変えていく
   
   
―――
これまでのやり方からの大転換。進める力は?
観光庁もDMOを進めるうえで「合意形成」を重視していますが、地域での利害関係の調整というのはすごく難しい。組織だけできても、「金の切れ目が縁の切れ目」になりかねません。一方で観光圏整備事業のときに私たちが得たものは、地域のつながり・人のつながりでした。そういう良い関係性がなければ、エゴとか、利害関係がぶつかってうまくいきません。色々な立場の人が集まれば集まるほど難しくなる。中心市街地活性化の事業などでもよくわかると思います。
   
大事なのは『関係の質』です。集まる人たちの関係の質が上がらなければ、良いアイデアは出てきません。良いアイデアが出れば行動が変わり、行動が変われば結果が変わります。これはダニエル・キム教授(マサチューセッツ工科大学)が『組織の成功循環モデル』として提唱した考え方だそうですが、観光圏整備事業のときに1週間で計画書を徹夜で作りあげた、あの時に良い関係性ができて、その土台があったからここまで来られた、ということを経験としてわかっていました。
あの時の人と人のつながりがなければ、急にDMOを作ろうと言っても難しかったと思います。
   
私たちの関係性づくりもまだまだこれからですが、先進的なのは熊本県の黒川温泉の取り組みです。黒川温泉は20数件の旅館がひとつのお宿という「黒川一旅館」というコンセプトを打ち出して、先程の『関係の質』が『結果の質』につながるという循環モデルを取り入れて地域づくりをしています。利害関係ではなく、関係者がみんなで理念や目指す方向を共有するというやり方。それを山形でも取り入れたいと思い、黒川温泉の取り組みのマネージメントをされた民間企業の方に協力をお願いしました。
   
      
―――『関係の質』を高める方法とは?
この地域ではお宿が蔵王温泉に90ぐらい、天童温泉が11ぐらい、上山温泉が20ぐらいあります。そうなると、何か一緒にやろうといってもまとまるのは難しい、という状況がありました。そうではなくて、こうありたいという未来を一度みんなで語り合いをしましょうと呼びかけ、集まってもらいました。
やり方はワークショップです。1回に5時間ぐらいの時間をかけて、出た意見やアイデアを壁にベタベタと貼っていく。ここでの半分以上の目的は、みんなの関係性を作ることです。形式的な話し合いをするのではなく、相手はどういうことを考えているのか、気ごころがわかる、というのが重要です。
そうしてやってみると、こんなこともできる、あんなこともやりたいというアイデアがどんどん出てきた。こういう場を提供するのも行政の仕事です。
   
メンバーは地域の旅館や農家の若い経営者に私が声をかけました。たとえば天童温泉は11あるお宿のうち10件の社長が代替わりし、平均年齢は39歳。何かを変えなければいけないということをよくわかっています。この場でも今回のDMOについて共有してきましたが、天童では自分たちもDMCとして会社を作ろうとしています。それがいい刺激になり、上山にも計画があります。3市連携で本社機能を持った組織を作り、各地域にもそれぞれの組織ができることになる。数年たてばほかの地域にとってのモデルになっているのではないかと思います。
そして今回、WILLERさんにDMOに協力いただけることになったのもすごくタイミングが良かった。旅行商品を作る、ということについてメンバーの意識もかなり変わりました。ただ理想を語っているだけでなく、地域の魅力をリストーリーして自分たちで商品にする、つまりもともとあったものに磨きをかければまだまだお客様が来てくれる。そういうことが見えてくると、彼らも本気になります。
   
   
――― WILLERとの提携のきっかけは?
以前、出羽三山と伊勢神宮の結びつきから旅行商品を企画したことがあります。そのときに知り合ったのがいまWILLERツーリズム&コンサルティングの代表取締役を務めていらっしゃる小高直弘さんです。
   
出羽三山と伊勢神宮は、出羽三山が祭る月読命(ツキヨノミコト)と伊勢神宮が祭る天照大御神が兄弟という結びつきがあります。羽黒山・月山・湯殿山はそれぞれ現在・過去・未来を表していて、この3つのお山を回ることで生まれ変わるという修行があり、また羽黒山の出羽神社には鏡池(かがみいけ)という池があって、古くから銅鏡が納められてきました。そういった納鏡の体験や山伏が案内する特別参拝、地域の人が山で採ったものを神社で提供する精進料理などを組み合わせて、商品として企画していました。このとき伊勢では式年遷宮にあたる年でしたが、人を通じて伊勢で式年遷宮に関係する行事を取り仕切る商工会議所の方にお会いし、アイデアを提案する機会がありました。おこがましい気持ちはありましたが、出羽三山と伊勢神宮のつながりを生かして何か一緒にできませんかと。そこでやりましょうと言っていただき、三重県や伊勢市の担当者にもつないでいただき、連携した企画が実現することになりました。
   
このときにおもしろいエージェントを紹介するということで知り合ったのが、小高さんです。三重の熊野古道が世界遺産になったときに「三重県観光販売システムズ協議会」を設立し、会社化して契約や販売もできるようにしていました。今で言うDMCの先駆けです。そのときからのご縁です。
先程お話しした昨年の地方創生交付金のときには、WILLERさんと相談して、WILLER EXPRESS高速バスが、それまで山形市内が終点だったのを天童温泉まで路線延長しました。温泉が終着地だと、ほかの旅行会社にとっても送客しやすくなります。温泉直行便というインパクトがある。それから、東京に行くバスは「新宿経由ディズニーランド」行き。ディズニーランド直行バスというのは地方の温泉地にとってはインパクトがあり、地元メディアも取材に来ました。
      
   
―――
「商流」は地域に浸透している?
先程の出羽神社は鶴岡市ですし、天童温泉は天童市です。山形市は経由地ということになりますから、誰のためにやってるんだという声もありました。それに対しては、まわりの地域にお客様が来れば必然的に山形市にも来ると説得した。それを示すために民間の調査会社に依頼しデータを取りました。
そうすると天童や上山に来たお客様の半分は、山形市にも来ていました。山形市だけを見ていてはだめだということです。感覚的に山形市には来ないだろうと思っていても、データを見れば半分は来ている。線を引いて考えているのは役所の人間だけで、それはお客様視点ではありません。
観光庁もデータを活用するように言っていますが、調査しデータを集める、それに対して予算が必要だということも、まだまだ理解されていません。
   
最初の観光圏整備事業のときから振り返っても、14自治体が一緒にやっていこうという中で、山形市のため、天童市のためという意識ではうまくいかなかったと思います。鶴岡市の観光資源を生かすといのもそういう発想で、観光資源はまわりの地域にあってもいい。そこから蔵王温泉や天童温泉に泊ってもらうということが大事になります。また出羽三山と伊勢神宮の企画のように、地域側で旅行商品を作れば企画料が入ります。特許料と同じ仕組みです。「商流」の中でこうして地元で商品を作れば、関わった事業者に利益が生じることになります。地元で企画し、商品の見せ方としてしっかり価値を付けて、その価値をわかっていただけるお客様に買っていただく。安ければいいと思っているのは地域側だけで、きちんと価値を付けていかなければいけません。こういったこともまだこれからの課題です。
   
私がよく言っているのは、これまでの観光業界はKKO=勘と経験と思いこみ。それからKDD=勘と度胸とどんぶり勘定。これに頼ってきました。これを変えていくには、小さい成功事例からでも、実際のお金の動きを見せることが重要だと思っています。ひとつ成功事例が出てくれば、2本目、3本目が続いていきます。
   
   
先進的DMOの可能性
   
――― 今後のDMOの課題は?
どこのDMOも抱えている問題だと思いますが、難しいのは旅行業だけでは食べていけない、ということです。人を雇用すれば人件費がかかり、事務所の経費もかかります。
普通、旅行会社が商品を売る場合には、交通費、宿泊、体験など含めて2万円、3万円というパッケージになります。しかし地域側で作る現地プランというのは、先ほどの出羽三山の企画で言えば7800円の商品でした。それでも現地の旅行プランとしては高いほうで、一般的には3000円、3500円といったところだと思います。その販売手数料が10%だとして、それだけで人件費や経費をまかなうだけの利益を上げていくことは現実には難しい。
   
ではどうするかというと、旅行部門というこれまでの観光の流れとは別に、地域商社という別の収益事業をやろうと考えています。そこが私たちのDMOの売りになってくるだろうと思っています。
地域商社として考えている事業は、たとえば免税手続きの代行です。外国人旅行客が増えたとき、たとえば温泉街のお土産屋さんというのは個人事業主なので、小さいお店に免税カウンターを置いて、というのは無理です。それをそれぞれのエリアに免税カウンターを置いて代行します。お客様がお土産として買った物の宅配の取扱いも考えています。地域側には取扱い手数料が入ることになり、さらに越境ECも扱うことになれば、通関の手数料も発生します。
そうやって「稼げる地域」を目指していこうと考えています。
   
   
―――「地域商社」の可能性はほかにも?
今は地域側で旅行者の顧客管理ということができていません。そこで、たとえばサクランボ狩りに来たお客様の中にはリピーターになり、中には「来年のこの1週間は時間があるから、この果樹園で働いてみたい」という人がいるかもしれない。そういう方にアルバイトとして働いていただく、そのプラットフォームをDMOが担い、お客様と果樹園に登録してもらう仕組みです。
お客様として来てくれた方の顧客管理ができていないのでそれをきちんとやる、それだけでは普通だと思いますが、地域側の担い手も不足しているのでそこにもつなごうということです。
   
さらにそうやって発生するお金の流れについては、地域通貨ポイントを使いたいと思っています。その運営を地域商社としてDMOが行います。大事なことは、地域外からお客様に来ていただき、キャッシュフローが生まれ、そのお金を地域でいかに循環させるかということです。
何かのイベントやブームで一時的にわーっとお客様がきた、というだけでは地方創生ではありません。観光客数は増えたけれど地域が潤っていないということもあります。それは地元の業者ではないところにお金が落ちているからです。人を呼べるからという理由で、大型のショッピングモールを誘致するのも同じことです。一部の人が潤ったとしても、それが地域外に出て行ってしまえば地域経済の活性化にはなりません。
   
   
――― インバウンドの拡大も重視していく?
インバウンドは確かに重要ですが、まだまだ国内のお客様の割合のほうが圧倒的に大きい、そういう自分たちのマーケットをよく見なくてはいけないと思います。国内の個人客に対応できていないのに、インバウンドを増やそうと言っても無理です。今どこから山形に来てくれているかといえば、東北からが7割。そういう足元をしっかり見てマーケティングしなければいけません。
   
国内の個人客に対応できれば、地域側の受け入れの基盤はできます。あとは情報発信をどうするか、です。そういうマーケットを無視してインバウンドだと言っていても、国からの補助金がなくなれば続かないということになりかねません。だから自分たちで仕組みを作っておかないとだめだと思っています。
地域側では爆買いへの期待もあったりしますが、普通初めて日本に来る外国人のお客様は、いわゆるゴールデンルートには行ってもいきなり山形には来ません。山形市内の商店街に外国人の方を呼びたいとしたら、まずは宿泊している蔵王や天童や上山の旅館と連携するところから考えなくてはいけない。いまそこが出来ているかということです。
   
一方で、交通の面では7月1日に仙台空港が「仙台国際空港」として民営化されました。ここを拠点として活用していきたいと思っています。WILLERさんもそうですが、外国人の方はよく高速バスに乗っていて、若い方はLCC(格安航空会社)もよく使う。これからはLCCと高速バスの「ハブ&スポーク」が重要だと思います。仙台空港と山形は、ちょうどその形です。高速バス会社の連携も進んでいて、WILLERさんが事務局の『JAPAN BUS LINES』ではインターネットで全国の高速バスの検索や予約ができるようになっています。
情報発信のやり方としては、リピーターをつかむのが一番コストがかかりません。LCCを使うような日本のリピーターをターゲットにして、そこに情報発信する。砂漠に砂をまくようなやり方ではだめだということです。
 
   
――― 最後に。大切にしている言葉は?
まずは人のつながり、です。
もうひとつは、昔話の「カチカチ山」の話に泥舟が出てきますが、あの泥舟が沈むのは一生懸命漕がないからだと、私はいつも言っています。泥舟でも沈むまえに漕いで着いてしまえと。
一生懸命やろうということです。泥だろうがみんなで向こう側までガンガン漕いでしまえば、沈む前に向こう岸に着きます。
   
先進的な取り組みを進める山形・上山・天童3市のDMO。
まだまだ可能性が広がるこれからの活動が注目されます。
青木様、ご協力本当にありがとうございました。
   
   
 
<本インタビューおよび『地方創生2.0‐先進事例のキーパーソンが語る-』に関するお問い合わせ>
新経済連盟事務局 地方創生PT担当 Email: info@jane.or.jp
   
   
   
   
<< 地方創生2.0 ‐先進事例のキーパーソンが語る-
   
   
   

以上