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「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」に対する意見書を提出しました。

金融・郵政改革担当大臣 亀井静香殿

平成22年5月19日
一般社団法人eビジネス推進連合会
会長 三木谷 浩史

「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」に対する意見書

 3月31日(水)、金融庁におかれまして、1億円以上の役員報酬の個別開示等を義務付ける「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」が公布・即日施行されました。一般社団法人eビジネス推進連合会は、インターネット及びeビジネスの拡大を通じた日本の競争力強化を目的とし、民間の立場から各種提言や情報提供を実現していく団体として、この内閣府令の見直しを求めます。
 今回の内閣府令改正の結果として、適正な事業運営を萎縮させるとともに、優秀な人材が海外に流出することにもつながりかねず、かえって株主利益を損ない、ひいては日本の競争力強化に悪影響を及ぼすおそれもありうるなど以下のとおり重大な問題点が考えられます。大臣におかれましては、この内閣府令を再改正するなどにより早急に問題を解消するよう、お願い申し上げます。

■第一 議決権行使結果の開示

府令第19条第2項第9の2号ハ二及び「企業内容等の開示に関する留意事項について」24の5-30

(1)「企業内容の開示に関する留意事項について(平成11年4月大蔵省金融企画局)」24の5-30における「、及びその根拠となる賛成又は反対の意思の表示に係る議決権数の割合」を削除すべきです。

(2)「企業内容等の開示に関する内閣府令」第19条第2項第9の2ハにおける「(役員の選任又は解任に関する決議事項である場合は、当該選任又は解任の対象とする者ごとの決議事項)」を削除すべきです。

1 株主総会での議決時の賛否数の開示(府令第19条第2項第9の2ハ関連)

 今回の府令及びガイドラインの改正により、株主総会における決議事項の賛成・反対の議決権数の割合を臨時報告書に記載し、遅滞なく内閣総理大臣に提出することが義務付けられました。しかし本件については、必要性や緊急性について合理的理由の説明がないまま人的・資金的に過大な負担を企業に強いることとなるため問題です。

 また、会社法で認められている株主総会の運営における議案の一括上程・一括審議採決を否定する余地があり問題です。一括上程・一括審議方式は、類似事案や関連事案について一括して上程し、審議することにより、重複説明や質問を回避し、時間を節約するとともに、総会屋による妨害を防ぐというメリットがあることから、株主総会の運営方法として一般的に利用されているものです。しかし、金融庁によるパブリックコメントの回答では、この指摘に対して「株主総会当日の採決方法は会社法に則って行われるものであり、本開示府令はこれに変更を加えるものではありません。」と非常にあいまいな表現となっており、対象企業を混乱させるおそれがあり問題です。もし一括上程・一括審議採決を否定する趣旨でないのであれば、本府令に反映させ明確化を図るべきです。

2 株主総会での取締役選任の個別議決(府令第19条第2項第9の2号ハ)

 役員選任・解任の決議方法についても、役員の選任議案は候補者ごとに独立した議案であっても、上記と同様、会社法上一括上程・一括審議方式が認められているとともに、一般的に利用されているものです。それにもかかわらず、これについては、上記1と同様の問題が考えられるほか、この取締役選任の賛否議決権数割合が個人の人気投票として利用されるおそれがあります。本来であれば役員の選任・解任事案は当該役員の実績によって判断されるべきであるにもかかわらず、この人気投票で株主の判断が大きく左右されるという弊害が想定され問題です。

■第二 純投資目的以外で保有する株式について

府令第二号様式 記載上の注意(57)a(e)

 純投資目的以外の目的で保有している投資株式については、銘柄ごとに、銘柄、株式数、貸借対照表計上額及び具体的な保有目的を記載することが義務付けられました。しかし、株式の持合を開示する必要があるからといって、持ち合いに関係のない経営戦略上重要な事業提携や買収防衛などにかかわる企業秘に属する株式の状況まで明らかにすることを強いることは、多様な資本提携活動を過度に萎縮させるおそれがあり、国際競争力強化の観点からも問題であると考えます。

■第三 役員報酬の個別開示

府令第二号様式 記載上の注意(57)a(d)

1 基本的な考え方

 株主価値の増加と、企業不祥事の防止を目的としてコーポレートガバナンスを強化することは重要であると考えています。しかし、株主価値の増大や企業不祥事を防止するためのコーポレートガバナンス強化の目的に照らした場合、現行制度で十分満たしているにもかかわらず、悪影響の大きい個別開示という手段を講じることは不適切であると考えます。

2 総額表示でコーポレートガバナンスは機能

 第一に現行制度における総額の株主総会決議で十分コーポレートガバナンスは機能していると考えます。投資家にとって役員報酬額は投資リターンを検討するうえでの指標となっていますが、その際に重要なポイントは投資リターンを算出するための「報酬総額」であり、各役員別の報酬額開示に大きな意味があるとは思えません。会社法では、役員報酬総額は株主総会で事前決定することとなっており、ガバナンスが働いていると考えられます。そもそも、金融庁が「先行事例」として比較検討している個別開示制度導入国(米国、英国など)では、日本のように役員報酬総額を事前決定する仕組みがないため、事後的に役員報酬を個別開示する制度を導入していると考えられます。それにもかかわらず、日本で現行制度に加えて役員報酬の個別開示を義務化することは屋上屋の二重規制であり、不要な規制です。また役員報酬総額を事前決定する現行制度については、その何が問題なのかは明らかにされていません。

3 立法事実がない

 第二に、諸外国と日本では前提が違っていることを十分考慮すべきです。諸外国において役員報酬の開示が問題となった背景には、欧米において支払われる役員報酬が極めて高額であり、不当に株主利益を損ねているのではないかと問題視されていたことがあります。しかし、日本における役員報酬額は欧米と比較してさほど高額ではなく、欧米とは状況が異なります。会社法で定める役員報酬総額の事前決定制度などによってガバナンスが十分働いている現状にかんがみて、あえて前提の異なる米国等の諸外国の制度に追随する必要はないと考えます。

4 悪影響が生ずるおそれ

 第三に、仮に役員報酬の個別開示を義務付けた場合、以下のような悪影響が発生するおそれが高いと考えます。パブリックコメントに対する回答では「会社あるいは個々の役員の業績に見合ったものとなっているのか、個々の役員に対するインセンティブとして適切か、会社のガバナンスが歪んでいないか等の観点から、投資判断及びガバナンス上重要な情報と考えられます」とありますが、以下の悪影響を無視してまで必要な情報とはいえないと考えます。
(想定される悪影響)

(1)役員
役員報酬の強制開示は役員個人のプライバシーを侵害するおそれがあるとともに、役員やその家族に対する犯罪を助長しかねないというセキュリティ上の問題が生じるおそれがあります。

(2)市場・株主
高額な役員報酬を得ること自体にマイナスイメージを抱きがちな日本の風潮がある中で個別開示を行った場合、業績に対して適切な報酬を得ていたとしても、貢献度や業績の多寡を十分評価せずに業界間格差や業界内格差について乱暴な比較が行われかねません。これにより、不当にマイナスイメージを与えてしまうことを懸念いたします。また、個別開示によって利益増大のためにリスクテイクして事業運営を行お うとする経営者が生まれにくくなり、かえって株主利益を損なうおそれがあるとともに、日本市場がシュリンクするおそれがあり、日本の競争力強化の観点からも問題があると考えます。

■第四 その他(制定過程の問題)

 役員報酬の開示については、金融審議会「わが国の金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」報告書の中で示されているところですが、役員報酬の「個別開示」をすることについては明示されておりませんでした。また、府令案等の概要に関する意見募集においても、個別開示の導入の趣旨が示されておらず問題です。さらに、本意見募集の実施、結果発表及び公布施行が非常に短期間の間に行われており、企業を混乱させる原因となっており問題です。このように手続き面でも多くの問題をはらんでいることから、本制度改正は見直されるべきであり、再度十分な議論を尽くす機会を設けるべきです。

以上