新経済連盟の政策提言活動とは?次の日本をつくるための新しい経済活動のカタチ

新経済連盟(JANE) 事務局 政策部長/小木曽

新経済連盟(JANE / ※ジェーン) が活動の主としている政策提言活動。JANEの活動の中身について、組織の成り立ちから、今どのような活動に取り組んでいるのか、目指すゴールはどのような社会の姿なのかなど、政策部長である小木曽にじっくりと話を聞きました。

(※)JANE = 新経済連盟の英語表記 Japan Association of New Economyの略称

-新経済連盟(JANE)は2012年に活動を開始しましたが、まずこの団体の全体像について、ご説明いただけますか。

「新経済連盟(JANE)」を立ち上げた目的というものが、この団体の名前に表れていまして、よく皆さん「経済連盟」に「新」が付いた名称だと思われるんですが、そういう意味ではなく、「新経済」でひと塊の言葉になっています。

つまり「ニューエコノミー」の連盟ということです。「ニューエコノミー」の声を、どのように代弁していくかということが、私たちの存在意義だと思います。

新経済連盟(JANE)の前身は、2010年に立ち上げた「eビジネス推進連合会」という団体ですが、当時は「第4次産業革命」という言葉は、まだ存在していませんでした。

ただ、そういうものが来るという予感が、私たちには確実にありました。産業構造自体が大転換をしていく時代ですので、産業における既存のルールは、リデザイン(再定義)される時代になると。

そうなった時に、民間企業の声の受け皿がなければ、いろんな声を上げることもできなくなってしまうと危機感を感じたわけです。

こうした背景の中で、民間企業の声の受け皿となるべく、新たに経済団体として新経済連盟(JANE)を立ち上げました。

デジタル経済を推進する社会基盤の整備

とりわけ昨年は、「第4次産業革命」という言葉が世の中で飛び交いましたが、様々な課題もここ数年の間に鮮明になりつつあります。「このままでは若い世代が従来型の働き方についていけない」とか「一括採用をどうするのか?」など、いろいろな話がありますよね。

私たちは、こうした課題意識を、団体の立ち上げ当時から抱いていました。

デジタルが経済の本流になっていく、そのためにはデジタルを大筋にした政策を作っていくべきだというのが、私たちの方針です。

デジタルを中核に据えた法制度や社会慣行などすべてを改めていかなければ、日本は世界から取り残されてしまうという極めて厳しい危機感を持っていました。 世界に目を向けると、今まで発展途上国だといわれていた国でも、どんどんイノベーションが起きています。

日本の大きな課題は、デジタル経済を進めるための社会基盤がまだまだ整備半ばということです。

新経済連盟(JANE)は、立ち上げ当初から、「デジタルファースト」と繰り返し言ってきましたが、2019年にようやく「デジタル手続法」という、行政手続き全般を原則デジタル化するという法律ができました。  

新経済連盟(JANE)立ち上げ以降の約10年の間に、中国やアフリカ諸国などではどんどんデジタル化が進んでいるので、日本のスピード感では遅いなと感じます。

「デジタルデータの整備」と「AIの活用」

デジタル化には、大きく分けて2段階あります。まず、デジタルデータが整備されていること。次にAIを使って、そのデータをどう活用するかということ

最近、「AIでデータを活用しよう」と盛んに言われていますが、まず、AIが使えるようなデータセットが揃っているかどうかが大切で、この点でも日本はまだまだ遅れています。

日本で、そもそもデータセットを揃えられない理由の一つに、「対面原則」「書面交付原則」という規制があることが挙げられます。この法制度を変えるために、新経済連盟(JANE)では例えば昨年、『デジタルファースト社会に向けた法案のへの期待と要望事項』という提言をしました。

『デジタルファースト社会に向けた法案への期待と要望事項』より(一部抜粋)

-グローバル視点での経済活動における日本の立ち位置というのは、どのようにお考えですか。

まず問題意識として、これまでのモノを中心としたモノづくりの世界からサービスを中心とした世界になっていくということがあります。

これまでをハードウェアが中心の世界でこれからをソフトウェアが中心の世界と言ってもいいと思いますが、ソフトウェアが中心の世界になると、国境を越えて様々なサービスが提供されるので、全世界的にどう対応していくのかということ、重要となります。

これは日本だけの問題ではなく、全世界的にも大きな問題として議論されています。  

政府も2020年の新年の挨拶で、安倍総理がデジタル経済への対応に触れていまし たが、新経済連盟(JANE)としては、具体的な提言をしていくことを、求められていると思います。

参考資料/『Japan Ahead 2』

-そうした課題意識を持った新経済連盟(JANE)として、2020年はどのような活動を行っていくのでしょうか。

2019年の4月に、私たちの政策提言がどれくらい政府に受け入れられているかを自己採点し、進捗評価をまとめた「JANEイノベーションモニター(通称:JIM)」というレポートを発表しました。

新経済連盟(JANE)としては、簡単に受け入れられるようなことや、他の経済団体が言っているようなことを提言しても仕方がないということで、まだ誰も言っていないような提言を出すように取り組んでいます。

ですので、まだまだ政府に受け入れられていないこともたくさんあります。先ほども触れました「対面原則・書面交付原則の撤廃」なども、そうです。

こうした提言を実現させていきたいと思っています。

12プロジェクトチームで検討・議論

新しい課題に取り組むために、これまでの9つのプロジェクトチームに加え3つのチームを立ち上げました。

具体的には、「AI」、「オープンイノベーション」、「SDGs」の3つの新たな課題に取り組むためのチームとなります。

新規プロジェクトチームの発足について

まず、現状の整理をした上で、経済のデジタル化に向けて政策としてどういう打ち手があるのかという議論を進めています。

デジタル経済を加速化させるためにはどうしたら良いのかということについての議論がまだまだ必要だと思っています。6月に向けて政府の成長戦略が作り上げられていきますので、それに向けて、様々な提言をしていきます。

「AI」については、デジタルファーストをさらに進化させるということが一つ。もう一つは、AIの活用の阻害要因がないのかどうかということを、新設したチームで議論していきます。

「オープンイノベーション」については、ベンチャーの知識をうまく活用しながら、どのようにイノベーションを拡げていくかが検討の中心となります。社会課題を解決するために新しい発想で実現していこうというスタンスのベンチャーの考え方と、従来型の産業の方たちを結びつけ、新たな価値を創造することが非常に必要です。

そのために、昨年「オープンイノベーションを促進するための税制要望」を出し、2020年税制改正大綱では「オープンイノベーション促進税制」が創設されました。

一過性のベンチャーブームで終わるのではなく、「オープンイノベーション」のエコシステムをどう作るかということがとても大切ですので、具体的な提言をしていくことと、新経済連盟(JANE)が主導するイベントやセミナーを重ねて、世の中に、この考え方を浸透させていきたいと思っています。

そして、「SDGs」ですが、今までの資本主義では評価されていなかった様々なことに対して、各企業は、社会的インパクトとして何を成しているのかが問われる時代になっています。

次の時代を作るために、全世界的に各企業がみんな悩み、模索している時代だとも言えます。

新経済連盟(JANE)には、アントレプレナーの方が多く所属していますが、各企業がどうして事業を立ち上げているかというと、だいたい皆さん思いは一緒です。

いろんな社会的課題を解決したいという思いがあり、自分の事業自体が、社会的インパクトを出せるという信念をお持ちです。

ベンチャーフィランソロピーの精神にも通じるのですが、社会構造がこれだけ変わってきていることが明らかになった今の時代に、「SDGs」の考え方をどう実現するかをずっと考えてきた各企業が、それぞれの事業でどう実践していけるか。これに向けて活動していきたいと思っています。

-これから新経済連盟(JANE)に加盟いただく企業の皆さまには、新経済連盟(JANE)の仲間として活動いただくことで、どんな価値やメリットが生まれると考えていらっしゃいますか。

おそらく様々な企業でも、それぞれの会社で既存の規制や制度の見直しに取り組んでいらっしゃるケースがあると思いますが、どうしても個社で動いていると、「個別の意見」としか捉えられないことも多いので、そういう状況を打破するために、ぜひ新経済連盟(JANE)という団体を使っていただきたいですね。

私たちは、社会の枠組みの再定義を求めていきたいと思っていますので、その再定義のツールとして、会員企業のみなさまには、新経済連盟(JANE)を活用いただけるというのが、メリットだと思います。

同じ志を持った仲間の集まりが新経済連盟(JANE)

もう一つ価値としては、新経済連盟(JANE)では同じ思いを共有した企業の方が集まっているので、横のつながりを深めていただきながらお互いに切磋琢磨できる機会が得られるということだと思います。政策別に各種イベントを開いていますので、団体に加盟し、イベントにご参加いただけます。

日々の業務で心が折れそうになっている場合でも、同じ悩みを抱えている方と新しい関係がつくれることで、もう一度自分の気持ちを燃焼させることができます。そうした気持ちの発火点の機会を提供できれば、私たちとしても幸いです。

-少し中長期的な視点で捉えると、新経済連盟(JANE)という団体は、今後どういう存在になっていくのでしょうか。

逆説的かもしれませんが、「新経済連盟」として、今は「新」と捉えていることが、どんどん「新」ではなくなるように変えていく団体であるべきだと思います。

その一方で、社会全体の進化のために、自分たち自身が常にアップデートし続けて、ずっと「新」であり続ける必要もあると思います。

小さくまとまるよりはむしろ、異論反論が生まれるような提言をし続ける団体であり続けたいですし、それを続けるためには、会員企業の皆さまの思いに支えられているというモチベーションが欠かせません。

-客観的にご判断されると、会員企業の皆さまには、新経済連盟(JANE)という団体はどのように映っていると感じますか。

まだまだ私たちがどんな活動をしているか、フィードバックしきれていないという実感がありますので、会員企業の皆さまの感じ方としては、日々の業務に政策がどう結びつけるのかが、難しい部分もあるかもしれません。

新経済連盟(JANE)としても、会員企業の皆さまとのコミュニケーションがもっと必要だと感じていますし、活動報告をどういう形で発信していくかという課題もあります。

-自分たちで活動の自己採点をしたという話もありましたが、成果として挙げられる代表的なものはどのような事例ですか。

まず「デジタルファースト」の分野では、デジタル手続法が成立したということがあります。各論としては、「対面原則」「書面交付原則」の撤廃を提言してまいりましたが、昨年の通常国会で「遠隔服薬指導」が一部解禁されることとなりました。

また、不動産業界でも、不動産取引については対面でなければいけないというルールがあり、Skypeなどによる遠隔での取引はできませんでしたが、その見直しが一部実現しています。

株主総会が行われる際は、株主に資料を郵送していたんですが、私たちの提言によって、それが電子化できるようになります。

各企業が自分たちの事業によって、社会課題を解決するということがますます求められる時代になります。そのためには、社会全体をデジタルシフトし、新しい時代に向けて、対応していく必要があります。

そのときに企業にとって障害となる、規制や社会慣例を再定義するための活動が新経済連盟(JANE)の活動です。

各企業の声を吸い上げ、実践していく団体が新経済連盟(JANE)です。 新経済連盟(JANE)は、それぞれに志を持った人が集まっているので、志を持った人同士の相互交流ができ、新しい気づきを得られるという好循環も生まれるんじゃないかなと思います。

これまでは企業からすると、政策というと、「そんな難しい話は関係ない」とか「知る必要もない」と思われてきました。

ですが、実は政策は、自分たちの事業とかけ離れた話ではなくて、日々の実務において、「どうして、こんなことができないんだろう?」とふと疑問に思ったことを、私たちにぶつけていただき、日本を良くするために、皆さまといっしょに次の日本をつくっていきたいと思っています。

小木曽 稔(新経済連盟(JANE)事務局 政策部長
1994年に東京大学法学部を卒業後、運輸省(現・国土交通省)に入省。
2010年2月よりeビジネス推進連合会(現・新経済連盟)現職。新経済連盟(JANE)では、政策部の長として、政府への具体的な政策提言を行うことを職務として精力的に活動している。

取材・編集/阿部健一
1975年生まれ。広告代理店にてコピーライター・CMプランナーとして活動。2017年に独立し、CREATIVE FIRM PICKELを立ち上げる。言葉を起点としたクリエイティブ、コミュニケーションをプランニングし、企業やサービスの課題解決を実践。クリエイティブディレクション、コピー、ライティング、グラフィックデザイン、WEBプランニング、ムービー、プロモーション、それらに紐づく最適なアウトプットを、硬軟問わず手がけている。

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