会員セミナー「ブロックチェーン利活用とICOの現状」を行いました

2017年10月13日、会員セミナー「ブロックチェーン利活用とICOの現状」を行いました。講師として、この分野の第一人者のお一人、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)の高木聡一郎様をお招きし、ブロックチェーンの基礎から、そのユースケース、ICO(Initial Coin Offering) の現状と課題まで、幅広にお話しいただきました。


講師:高木聡一郎様(GLOCOM 主幹研究員/准教授/研究部長)

■高木様著作
   
まず高木様は、データの連結(改ざんが困難)、情報資産とエンティティの紐付け(情報の所有・流通・管理)、P2Pでのデータ管理・合意形成(信頼性の向上、中央の管理者不要)、というブロックチェーンの基本要素を踏まえた上で、コンセンサスをとる際の処理速度の問題や、リーダー不在のため仕組みに対する意思決定が困難となること等、その課題を指摘されました。記憶に新しい本年8月のビットコインの分裂騒動は、こういったブロックチェーンそのものが持つ問題点が背景にあるとのことです。
   
続いて、ブロックチェーンのユースケースについての説明がありました。①トークン、②データベース、③スマートコントラクト、という3つのカテゴリが考え得る中で、①としては、ビットコイン、カラードコイン(ビットコインブロックチェーンを用いた、ビットコイン以外の取引データ記録)、オルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨)、ICO、地域通貨、社内通貨、社会保障(生活保護のお金をトークンに転換)等が、②としては、ダイヤモンドの所有権、著作権、サプライチェーン、学歴、投票、公証、食品偽装(産地・生産者等の見える化)、チケット偽造対策、医療(医療データに誰がアクセスしたか等)、難民ID等、が挙げられるようです。
また、電力取引、土地登記、シェアリング、クラウドソーシング等は、①②③の全ての機能を持つものとも考えられ、これらが実現するかが、ブロックチェーンが暗号通貨の技術から汎用的分散型サービスに転換し得るかどうかを示すものと言えます。
   
ICOについては、近年投資額が右肩上がりで増加しており、これによって、ベンチャー投資の民主化(誰でもアーリーステージのベンチャーに投資できるように)というメリットが生まれた半面、ガバナンス(コントロールする主体の不在)、透明性(発行量・スケジュール等が不明確)、インセンティブ(巨額資金の獲得によってプロジェクトを続ける意欲が低減)等の問題点もあるとのことです。

これらの課題に対して、公的な規制も含めた何らかの社会的な対応が為されることは十分考えられ、今後の流れを注視していかねばなりません。

   
ブロックチェーンは現在の社会活動の在り方を根本から変える可能性を持つと言われる中、高木様からは、その現状と将来的な課題について冷静に考えるための材料となる貴重なお話をうかがうことができました。
   
高木様、そしてご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。

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