2018年5月29日、会員セミナー「戸田市の事例から学ぶ、日本の教育現場の現状」を行いました

新経済連盟「教育改革PT」では、教育へのICT導入・EdTechの推進について今後積極的に発信をしていく予定ですが、その準備段階として「教育の未来とICTの役割~先進事例から見る現状と課題~」と題した数回の勉強会を開催することになり、今回はその第四回目となります。
  
今回は講師として、戸田市教育委員会教育長である戸ヶ﨑勤様をお招きいたしました。埼玉県戸田市では、全国に先駆けたICT環境の整備を行い、産官学民との連携を進め、積極的にプログラミング教育にも取り組んでいます。戸田市の教育改革について、お話していただきました。
  
講師:戸ヶ﨑勤様(戸田市教育委員会教育長)
  
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講演概要
  
【戸田市の概要】
● 東京都に隣接しており、交通の便が良い。
● 30歳代の子育て世帯が多い。
● 人口減少が進む中、人口が増えている街。
● 小中学校合わせて18校あるが、教室不足になっている。
  
【教育改革の視点と課題】
● 学校同士、教育委員会同士は繋がっていると思われがちだが、独立している。
● 教育の現場では、経験と勘を頼りにしていることが多い。
● 一番の問題は、ベテランの優れた指導の「実践知」や「暗黙知」が可視化されていないこと。
● ICT環境の整備が進んでいないため、エビデンスをとるためのベースがない。そのため、定量化することができず、根拠を示すことができない。
● 教育には「不易流行」という、変えてはならないものと、変えたほうがよいものがある。
● 教育が主体性を持って、社会をリードしていくべき。未来社会は予測不可能性が加速度的に高まり、少なくとも現在の延長線上にはない。
● 新学習指導要領が求めているキーワードは、①カリキュラムマネジメント、②社会に開かれた教育課程。校長の仕事だと思われがちだが、一般の教員も教育現場において、この考え方が必要。
  
【戸田市の教育】
● 戸田市では、①AIでは代替できない能力、②AIを活用できる能力を育成している。
● 限られたリソースでは実現できないため、産官学民のリソースをフル活用し、安価で効率的に、最先端の質の高い教育を目指している。
● 戸田市が一番できていることは、学校や教室を実証の場(Class Lab)として提供し、企業に成果を還元するWin-Winな関係。
● 「21世紀型スキル」「汎用的スキル」「非認知スキル」と呼ばれる能力を育成するために、小中一貫したPEERプログラムを開発。P:プログラミング教育、E:英語教育、E:経済教育、R:リーディングスキル。これらは既に先行実施しているが、戸田市小・中学校一貫プログラミング教育カリキュラムを作成し、平成32年度本格実施予定。
● 優秀な教員の授業がなぜ優れているのか、EdTechを活用し、エビデンスを明らかにし、若手に効率的に伝承していきたい。
● 産官学民と連携したデジタル技術等を教室の中で積極的にフル活用し、学びの効率化やさらなる質の向上を目指したい。
● EBPMによる効果検証ができる基盤作り。埼玉県学力学習状況調査(IRT、Panel Data)により「学力の伸び」を把握し、戸田市独自の教職員を対象にした「指導方法等に関する質問紙調査」等を行い、学習の伸びと教員が紐づいたデータを抽出している。教員の評価に使うのではなく、あくまでも「どのような教員の指導方法が成果を上げたのか、そのような資質能力を備えた教員が成果を上げたのか」を明らかにするために実施している。
  
  
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講師をお務めいただいた戸ヶ﨑様、ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。
 
  
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